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2017年5月 2日 (火)

ニュースの真相

2004年秋、米テレビ3大ネットワークのひとつCBSの『60ミニッツⅡ』の名物アンカーマン、ダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)が降板するに至った。当時、ブッシュ大統領は再選を目指し、民主党の候補ジョン・ケリーと競っていた。
番組のプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、同じ年にイラクの刑務所での捕虜虐待を報じ、賞を獲得した辣腕ジャーナリストである。ダン・ラザーとは父娘のような信頼関係で結ばれている。
原作はメアリー・メイプスの手記である。

ラザーやメアリーが若いスタッフに投げかける「どんなに批判されても、メディアが質問をしなくなったらこの国は終わりだ」という言葉は何回も語られる。

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監督:ジェームス・ヴァンダービルト
原作者:メアリー・メイプス
音楽:ブライアン・タイラー
製作国:アメリカ  2015年  125分

事の発端は、ブッシュが若い頃、父ブッシュの力でベトナム戦争行きを免れたのではないかという疑惑である。ブッシュの軍歴詐称はほかのメディアも追いかけていた。メアリーのもとに、ブッシュの軍役逃れを示す1枚の書類が舞い込んだ。メアリーは書類の真偽を確かめるべく奔走するが、功を焦ったのか最後の詰めが甘いまま、ブッシュの軍歴詐称疑惑を放送してしまった。

放送後、大反響を巻き起こすが、ブロガーから「書類は偽造」と指摘され、批判が高まっていく。メアリーたちは再調査に奔走するが、書類の信憑性に疑問が残った。

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社の上層部は報道機関としての信用を失墜させたことで、メアリーたちを厳しく追及した。
内部調査委員会で、何人もの弁護士を前にして取材メンバーは調査を受ける。
「コピーの信憑性は?」「証言者の裏をどの程度取ったのか?」「筆跡の鑑定を行ったのか?」「なぜ、書類を真正と断じたのか?」
少しでも返答に詰まると、質問が矢のように浴びせられる。内部調査とはいえ、厳しい糾弾の場だった。

調査が終了し、弁護士たちが席を立とうとした時、メアリーは「書類の真偽」や「証言の信用性」の枝葉末節なことばかりが追求されたが、明らかにしなければならないブッシュの軍歴詐称疑惑には、少しも触れていない。何も解決されていないと調査団に噛み付く。
メアリーたちの行動は、故意に行われたものではないと判断されたが、処分は非情なだった。
メアリーたちは、圧力に屈することなくジャーナリストの矜持を貫いたが、勇み足が命取りになった。→人気ブログランキング

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