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『一九八四年』[新訳版] ジョージ・オーウェル

2017年1月20日に、ワシントンDCで行われた大統領就任式に集まった聴衆の人数を、トランプ政権の報道官が、史上最高と水増しして発表した。メディアは、聴衆が著しく少ないのはテレビ画面を見れば明らかであると報道した。
これに対して、トランプ政権の最高顧問の一人が、報道官の報告は嘘ではなく「代替的な真実(Alternative Fact)」と説明した。事実を平然とねじ曲げたこの発言に、アメリカの有権者はトランプ政権にオーソン・ウェルズの『一九八四年』で示された全体主義の影を感じとったのだ。
そして、本書は Amazon.com の「書籍ベストセラー20」にランクインした。それが日本にも飛び火したわけである。
原作の発刊は1949年。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
一九八四年[新訳版]
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ジョージ・オーウェル/高橋和久
ハヤカワepi文庫 2009年7月
売り上げランキング: 637

主人公のウィンストン・スミスは39歳。
オセアニアで3番目に人口の多い地域の首都ロンドンに住んでいる。ウィンストンは報道、娯楽、教育および芸術を管理する真理省記録局に勤めている。仕事は歴史の改竄。
何年も前から戦争が続いていて、週に20発か30発のロケット弾がロンドンに打ち込まれている。地方都市には原爆が投下された。

大きなピラミッド型の真理省の建物の壁には、「戦争は平和なり、自由は隷従なり、無知は力なり」という党のスローガンが書かれている。真向かいの建物に貼ってあるポスターには「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」と書かれている。
人びとは町中に設置されたテレスクリーンで見張られている。各家庭にもテレスクリーンが設置されていて管理されている。
厳重に監視され、あらゆることが〈ビッグ・ブラザー〉に強制される社会。子どもたちは親たちを非正統派の兆候が見えないかと監視している。
子どもたちの行動は、1960年代後半から中国全土で起こった文化大革命を彷彿とさせる。社会の構造は現在の北朝鮮と重なる。

古い新聞や書物は回収され破棄される。国にとって都合の悪ことは消し去られるのだ。
言葉はすべてニュースピーク言語に統一されつつある。世界的文学作品はニュースピーク言語に置き換えられていき、言葉の意味は狭められて、副次的な意味は削除されていく。
こうして、〈ビッグ・ブラザー〉の意図する形に国は造り変えられている。

ウィンストンはジュリアという若い娘と親しくなり、ふたりは密会を重ねる。
やがて、ウィンストンは革命組織「ブラザー同盟」とコンタクトをとるようになるが、何年も前から彼を監視していた男がいたのだ。
ウィンストンは思考警察に捕まり、過酷な拷問を受け洗脳されていく。→人気ブログランキング

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