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『バッタを倒しにアフリカへ』前野ウルド浩太郎

定職に就くことができず不安定な暮らしを強いられている博士号取得者を「ポスドク」と呼ぶ。ファーブルを尊敬しバッタをこよなく愛する著者の研究テーマはサバクトビバッタ。著者はバッタの研究のためにモーリタニアに出かけ、論文をものにして一旗揚げ、ポスドクから脱却しようと考えている。
2年間、モーリタニアの国立サバクトビバッタ研究所のゲストハウスで暮らすことになった。

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
前野ウルド浩太郎
光文社新書  2017年5月

日本人の昆虫学者がなぜアフリカに出張するのか?
それは、世界のバッタ研究の情報は実験室内で得られたものがほとんどで、野外でバッタを観察したものは極めて少ないという事情があるという。
なお、日本は以前よりモーリタニアの漁業支援に力を入れており、港には日本が出資した魚市場や加工工場が建設されている。現在、日本で消費されているタコの3割はモーリタニアから輸入されている。

著者が「バッタの大発生を目の当たりにし、蝗害を未然に防ぐ方法を突き止め、アフリカを救いたい。バッタの研究に人生を捧げる」と大志を語ると、人格者であるババ所長は、「今日からコータロー・ウルド・マエノと名乗るがいい」と、最大級の賛辞を送った。ウルド(Ould)とは、モーリタニアで最高に敬意を払われるミドルネームで、「◯◯の子孫」という意味がある。
ところが、著者がウルドの名を授かった後に、モーリタニア政府が「みんな、確実にだれそれの子孫なんだからウルドは止めよう」ということになり、法律が改正されたという。

バッタは孤独相では鮮やかな緑色となりおとなしくお互い避けあう。一方群生相では、バッタはお互い惹かれ合い群がる習性が出現し、黄色と黒のまだら模様となる。群生相のバッタは体に対して翅が長くなり、飛翔に適した状態になる。なぜサバクトビバッタは大発生するのか。それは混み合うと変身する特殊能力を秘めているからである。
ちなみにイナゴとバッタは相異変を示すか示さないかで区別される。日本ではオンブバッタやショウリョウバッタなどと呼ばれているが、厳密にはイナゴの仲間である。

著者は、バッタの大軍に遭遇できるのか、さらにどこかの研究機関の正職員の席を手にすることができるのか。波瀾万丈の展開は、さながらサスペンスのようである。→人気ブログランキング

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