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2017年10月 5日 (木)

院長選挙 久坂部 羊

大学病院長の急死を機に繰り広げられる、4人の副院長の選挙戦と殺人犯探しがテーマ。
天都大学病院の院長が急死して、新しい院長を選ぶ院長選が行われる。そんなおりフリーライターの吉沢アスカは「医療崩壊」をテーマにしたノンフィクションを書こうと取材のため、天都大学病院循環器内科の徳富教授の部屋を訪ねた。
4人いる副院長のなかでもっとも院長に近い人物と目される徳富教授は、「臓器ヒエラルキー」による循環器内科至上主義を口にしてはばからない。心臓を扱う内科が一番えらいに決まっているというのが口癖である。かつてヨーロッパでは外科は床屋を兼ねていたし、看護師は売春婦を兼ねていたと言ってはばからない。
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久坂部 羊
幻冬舎文庫
2019年

アスカはもうひとりの副院長・消化器外科の大小路教授にインタビューする。大小路教授は、おのれの手術技量に自らがアートと惚れこむほど自信を持っているうぬぼれ屋だ。
大小路教授も、たかが◯◯科という上から目線の「医療科ヒエラルキー」に凝り固まっている。聴診器をあてて薬を出しているだけの内科より、消化器外科が上だとうそぶ。

次は、若手の改革派、副院長の整形外科の鴨下教授は「天都大の狂犬」と呼ばれる激しい性格の持ち主である。大学病院の研究と診療を分けることと、内科と外科の整形外科蔑視に怒りをまくしたてた。

最後は、「銀髪の守銭奴」と呼ばれる眼科の百目鬼教授は、最年長の副院長で白内障を手術しまくる病院の稼ぎ頭であるが、周りから大顰蹙を買うドケチである。

前院長が夜中に突然死したとき夫人は救急車を呼ばす、まず准教授を呼んだ。そして准教授は4人の副院長を呼び、循環器内科の徳富教授が心房細動発作による死と断定した。前院長は病院経営に悩んでいたから自殺説もあるが、病院改革達成のため続投の意思表示をしていたから他殺説もある。→人気ブログランキング

看護部長は4人の副院長をボロクソにこき下ろした。
それとは対照的に、低姿勢な事務部長は4人への歯が浮くような賛辞を並べ立てる。
大学病院という閉鎖社会において、診療科や職種のそれぞれの思惑を大いに誇張させながらストーリを展開させる。読者をさもありなんと納得させる著者の医師ならでは視点が冴えている。

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