神秘大通り 上下
メキシコ・オアハカでの少年時代、アイオワシティでの高校生から小説家として大成するまで、そして雪のケネディ空港から香港を経由してフィリピンに行き繰り広げられる現在のこと、これらの3つのシチュエーションが、シームレスに幾度も変わりながら語られる。
主人公の半生がマイノリティに対する優しい視点で描かれている。
フワン・ディエゴは友人の女医からベータ遮断薬とバイアグラを処方されていて、ベータ遮断剤を飲むか飲まないか、あるいは半錠を飲むか2錠かは、彼の行動と精神状態に深く関わると思っている。
彼はメキシコのオアハカのゴミ捨て場で育った。教育を受けたことがなかったが、ゴミの山から本を見付け出しては片っ端から読み漁り、スペイン語はもちろん英語も読み書きし話すことができる。
妹のルペは声帯に異常があり、話す内容を理解できるのは兄だけである。人の心を読むことができて、未来が見える。母親はイエズス会教会の掃除婦であり、夜は娼婦として働いている。3人はイエズス会教会の一室を住居として与えられている。
アイオワからやってきたイエズス会の神学生が兄妹と深く関わり合いをもつようになる。
14歳のときにトラックに脚を轢かれ、フワン・ディエゴは足を引きずるようになった。
神秘大通り(上) ジョン・アーヴィング 小竹由美子訳 新潮社 2017年 |
神秘大通り(下) ジョン・アーヴィング |
フワン・ディエゴはアイオワンの宣教師と男娼の夫婦の養子になり、大学町のアイオワシティに移り住んだ。高校では母親が女でないという理由でいじめの洗礼を受けた。
そこから話は飛んで、フワン・ディエゴは名の通った小説家になり、有名作家を多く輩出した創作クラスで教える立場になった。彼はその後の人生の大半を、アイオワシティでひとりで暮らしてきた。
フワン・ディエゴがフィリピンに滞在する目的は、ルペの片思い男、アメリカ人徴兵忌避者のたっての願いを実行するためだった。太平洋戦争で戦死したその男の父親の墓に墓参することを約束したのだ。
フィリピンで小説家として成功した、創作クラスの教え子が、親戚総出で鬱陶しいくらい大々的にフワン・ディエゴを歓待してくれる。彼は行く先々で出没する謎の母娘と、バイアグラの力を借りて性的関係をもってしまうが、母娘とのことが夢なのか現なのかはっきりしない。
フワン・ディエゴは、繰り返し過去に引き戻されてしまうことを不思議に思うようになり、深い眠りに襲われるようになる。→人気ブログランキング
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