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2018年1月17日 (水)

浮世絵鑑賞辞典 高橋克彦

編者は、前著・ハードカバーの『浮世絵辞典』が

59人の絵師たちの作品が、オールカラーで掲載され、絵師や作品について要諦をおさえた解説がついている。浮世絵の歴史や浮世絵が出来上がるまでの工程も紹介している。
浮世絵は、風俗画、美人画、役者絵、風景画、春画など、その守備範囲は広い。あくまで大衆が対象である。庶民に育まれて発達した浮世絵は、日本から輸出される陶磁器を包む紙として船でヨーロッパに運ばれた。売れ残ったか、あるいは用済みとなった浮世絵は、ショック・アブソーバーとして最後のご奉公で海を渡ったのだ。18世紀のヨーロッパで、人びとは紙切れに描かれた絵に驚かされた。
このエピソードは、浮世絵らしくていい。

61cekve9icl_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_浮世絵鑑賞事典
高橋 克彦
角川ソフィア文庫
2016年

編者は、北斎の4つの作品を掲載している。1枚は赤富士を描いた『凱風快晴風』。
他の3点は、『おしをくりはとうつうせんのず』『賀奈川沖本杢乃図』『神奈川沖浪裏』である。3点とも海、特に波を描いているが、どう見ても前2点は習作の趣である。『おしをくりはとうつうせんのず』の波は、餃子の皮のようで頼りない。『神奈川沖浪裏』で、迫力にしても構図にしても究極に行きついたのだ。
この3点から、北斎は天才であるがたゆまぬ努力の人でもあったことを、編者は伝えたかったのだと思う。

本書は、たとえば、浮世絵美術展に行くときなどにポケットに忍ばせておいて、事前に電車の中でチェックするのに便利だ。何しろコンパクトだからどこにでも持っていける。
解説は杉浦日向子。→人気ブログランキング

 

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