京都ぎらい 官能編 井上章一
京都の歴史的な色欲ネタをピックアップしたのが本書。
女性とくに美人が政治の駆け引きに使われたり、まるで贈答物のように扱われたエピソードを書物から拾い出し、これでもかとばかり紹介している。女性には薦められない内容。
鎌倉の性的な魅力を伝える文芸は一つもないという。そのことを考えれば、京都には宮廷文化によって培われた色欲的な要素が多分にあったという。
京都ぎらい 官能篇 井上章一 朝日新書 2017年 |
漱石は京都を小馬鹿にしていたことはよく知られているという。
『三四郎』の中で、主人公の三四郎が福岡から汽車で上京するさいに、女の乗客に誘惑されるが、その女が乗車してきたのが京都駅である。
漱石は京大の教授招聘を断っている。
1960年代半ばから京都観光の様子が変わってきたという。
新幹線の開通で女性客が増え、1970年代になると一人旅の女性が見られるようになった。そんな女性が、大学受験期の著者が住む奥嵯峨にも現れたという。それまで、京都は好色都市のレッテルが貼られていた。
京都観光の女性化は、とりも直さず色街のイメージの払拭であった。
しかし、そう簡単に払拭できるわけではない。ノーパン喫茶は大阪発祥と誤解されているが、実は、最初の店は1979年に京都の北郊、西賀茂に出店されたという。
最近は色欲とはかかわらない京都のイメージができあがっている。デオドラント化に成功した感がある。
著者は建築学を専門とする立場で唱える。
宮廷文化の精華である桂離宮の造形と、遊郭の揚屋の造りが酷似している部分があるという。この建築様式の類似は、宮中から一般民衆に、性がアウトソーシングされたことを示すと大胆に解釈している。→人気ブログランキング
京都まみれ/井上章一/朝日新書/2020年
京都ぎらい 官能編/井上章一/朝日新書/2017年
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