家康、江戸を建てる 門井慶喜
相模国石垣山の頂での、秀吉と家康との有名な「連れしょん」の場面から物語は始まる。秀吉は家康に駿河から関東への国替えを命じた。部下たちは反対したが、いやと言えるはずもない。家康は快諾したふりをした。
家康は武州千代田の地にある江戸城を根城にするという。当時、江戸は古びた江戸城とわずかの漁民しかいない寒村で、あたり一面が低湿地であった。
江戸を大阪のようにしたいと家康は言う。
ここから江戸を都市として機能させる、空前のプロジェクトが始まる。
家康、江戸を建てる 門井慶喜 祥伝社 2017年 |
まずは、湿地をどうにかしなければならない。そのためには、川の流れを変える利根川東遷を行う必要がある。
貨幣を作らなければならない。金の純度が高く信用される小判を造り、日本橋に鋳貨工場を置いた。
飲み水は七尾(井の頭)から上水道を引いた。城の外堀と交差するところには水道橋を造った。
日本中のどの城の石垣をも凌駕する石垣を造らねばならない。石は伊豆から船で運んだ。
江戸に入府して17年、66歳の家康は純白の天守閣から江戸の街を見下ろしている。
雨が降れば水浸しになってしまう、どうしょうもなかった湿地が、今では一大開発現場となっている。何十万人もの人間が生活している江戸が眼下に広がっている。
これからも江戸は絶えまなく変わっていくのだろうと家康は思う。
本書の主人公は、江戸を整備し都市として独り立ちさせた人びとである。→人気ブログランキング
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