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2018年2月13日 (火)

ノーベル賞の舞台裏

1968年の川端康成のノーベル賞受賞について、受賞の50年後に公表された資料によると、まず三島由紀夫が候補者としてあがり、次の年に谷崎潤一郎そして川端康成と候補が入れ変わっている。推薦者は日本ペンクラブであったり、ハーバード大教授であったりしている。
ノーベル賞の裏話が満載。

「ハルキ狂想曲」が始まったのは、村上春樹がカフカ賞を受賞した2006年。
村上は、アカデミー会員の奥さんたちの間では評価が高いが、肝腎の選考委員の間ではあまり評価されていないと、大いに皮肉っている。一般大衆の高い人気と文芸評論の専門家の間での人気のなさのギャップが大きいらしい。
文学賞の場合は地域性が考慮されるというから、2017年に日系のカズオ・イシグロが受賞したので、村上春樹は当分ないということだろうか。

Photo_20210213084601ノーベル賞の舞台裏
共同通信ロンドン支局取材班
ちくま新書 
2017年

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアフレッド・ノーベル(1833~96年)の遺言によって、1901年に始まった。物理学、化学、医学生理学、文学、平和、経済学よりなる。

当局がノルウェーとスウェーデンにあるのは、1900年にノーベル財団の設立法令がスウェーデン兼ノルウェー国王によって公布され、1905年にノルウェーとスウェーデンは同君連合を解消したが、授与機関は変更されなかったためである。
経済学賞はスウェーデン国立銀行の設立300周年を記念して、1968年に始まった。経済学賞は批判が多く、身内のノーベル財団からも「ノーベル賞ではない」とされている。
また、すべての科学に母と称される数学賞がないのは、生前ノーベルが著名な数学者と喧嘩したからだといわれている。

韓国(ノーベル賞1個)は、ノーベル賞に対して過熱気味であり焦りがある。中国(3個)はマイペースで長期戦で王座を狙おうとしている。日本(23個)は中韓に水を開けているが、さらにその差を広げようと政府が力をいれている。3国は今後もノーベル賞受賞で対抗心を燃やし続けるだろうという。
中韓との比較すると日本の留学者数の少ない現状が、将来のノーベル賞の数に影響してくるのではないかと執筆陣は危惧している。

平和賞の選考によって、世界の政治情勢に手を突っ込むようなことが、幾度か起こっている。
その例は、ダライ・ラマや中国の民主化運動家・劉暁波の受賞がそうであった。また2012年にはEUが受賞している。
「オバマは見どころがあるから、平和賞をあげて応援しよう」というノーベル賞側の意向は無残な空振りに終わっている。
2014年に平和賞を受賞した、パキスタン人のマララ・ユスフザイは、欧米主導の演出されたヒロインとの批判がある。

日本はノーベル賞に関して加熱しすぎと当局から指摘されている。マスコミのノーベル賞に対する過剰な報道を煽っているのが、自分たちであるという反省も語っている。→人気ブログランキング

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