風神雷神 柳広司
秀吉が催した醍醐の花見(1598年 慶長3年)からはじまり、宗達が醍醐寺の依頼の屏風を描き上げ、花見をむかえるところで終わる。
宗達はふたりの人物によってその才能が開花させられた。ふたりとは、万能の文化人・本阿弥光悦と公卿の粋人・烏丸光広である。
京の扇屋・俵屋の養子である宗達は、20歳を超えたというのにぼんやりしていて、絵付け職人としてはとびぬけて秀でているが、客あしらいがなっていない。そんなアスペルガー症候群的な性癖である。
風神雷神 風の章 柳 広司 講談社 2017年 |
風神雷神 雷の章
|
本阿弥光悦から書籍の下絵の依頼を受け、嵯峨本の制作に携わる。
嵯峨本とは、紙師宗仁が提供する高級和紙に、宗達が下絵を描き、光悦の文字を配した製本書籍のこと。嵯峨本は、世界でも類を見ない美しさを備えた製本書籍と、今もなお称えられている。
光悦は、家康から洛北鷹峯の地を拝領し、本阿弥一族や町衆、職人などの 仲間を率いて移住した。宗達も誘われたが、断って俵屋の後を継ぐことにした。
宗達が店を仕切るようになると、俵屋は大いに繁盛した。そして、俵屋は屏風絵、絵巻、掛物、貝絵、カルタなど、何にでも絵付けする絵屋に生まれ変わった。
ある日、宗達の前に烏丸宏光が現れた。宗達は烏丸に連れられて公家の家に上がり込み、秘蔵の名品を見せてもらい模写した。烏丸のおかげもあってか、公卿屋敷や寺社から注文がくるようになった。
やがて、絵師として最高位の「法橋」の位を授かった。
醍醐寺から花見の時に使う二曲一双の屏風の注文を受けた。宗達は2年の猶予を願い出、隠居した。納期に間に合わせ絵を仕上げたあと、発作に見舞われて亡くなった。
仕事場に、誰も見たことがない構図の「風神雷神」の屏風が残されていた。そこには落款も署名もなかった。
本作では、3人の女性が宗達と関わる。初恋の女性・出雲の阿国、宗達が密かに心を寄せる光悦の娘・いく、そしてすべてをお見通しの妻・みつ。観桜の日、3人が連れ立って醍醐寺に現れる。→人気ブログランキング
【絵師が主人公の歴史小説】
『風神雷神』柳広司 2017年
『北斎まんだら』梶よう子 2017年
『眩(くらら)』朝井まかて 2016年
『ごんたくれ』西條加奈 2015年
『ヨイ豊』梶よう子 2015年
『若冲』澤田 瞳子 2015年
『北斎と応為』キャサリン・ゴヴィエ/2014年
『フェルメールになれなかった男』フランク・ウイン 2014年
『東京新大橋雨中図』杉本章子 1988年
« がん光免疫治療の登場 永山悦子 小林久隆(協力) | トップページ | ファインダー・キーパーズ 上下 スティーヴン・キング »
「絵画」カテゴリの記事
- たゆたえども沈まず 原田マハ(2020.04.15)
- 楽園のカンヴァス 原田マハ(2020.03.16)
- デトロイト美術館の奇跡(2020.02.23)
- バンクシー 毛利嘉孝(2020.02.01)
- 消えたフェルメール 朽木ゆり子(2018.11.06)
「時代小説」カテゴリの記事
- 壬生の女たち 藤本儀一(2023.06.19)
- 一刀斎夢録 浅田次郎(2022.03.07)
- 仇討検校 乾禄郎(2022.01.19)
- 五郎治殿御始末 浅田次郎(2021.06.24)
- 藍染袴お匙帖 藁一本 藤原緋沙子(2021.05.03)
« がん光免疫治療の登場 永山悦子 小林久隆(協力) | トップページ | ファインダー・キーパーズ 上下 スティーヴン・キング »
コメント