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2018年3月 6日 (火)

13・67 陳 浩基

現在2013年から1967年にさかのぼる逆年代記(リバース・クロノジー)で構成された6編の連作中篇集。政治に翻弄され続ける香港社会を舞台に、ひねりの効いた設定で詳細かつ濃厚に描かれた質の高い本格警察小説。
まずは香港の簡単な歴史から。香港はイギリスとのアヘン戦争(1839〜1842年)後、イギリスの植民地となった。第2次世界大戦(1941〜1945年)の間は、日本に占領されたものの、戦後は中国に返還されず、イギリスの統治が1997年まで続いた。そして中国に返還され現在に至る。香港の住民は中国での戦争や共産主義体制から逃れてきた人々が多いという。

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陳 浩基/天野健太郎訳
文藝春秋
2017年

最初の章「黒と白のあいだの真実」は、本書の終章に相当する内容である。
1997年の香港の祖国復帰以降、警察のイメージは失墜した。警察は政府の犬と墜ち、偏った法の執行者として官憲の悪事を見逃す、政府のためのサービス業に成り果てたと、人びとは警察を批判した。
そんな逆風のなか権力におもねらず、ただひたむきに事件を解決する「やり手デカ」ロー警部が活躍する。
がんに侵されたクワンが臨終の床にいながら捜査に加わるという、奇想の設定である。
大富豪の殺人事件が起こった。館にいた5人いずれも犯人の可能性がある。5人が事情徴収で集められたのは病院の病室。
ロー警部は、がんの全身転移によって意識が朦朧としている「天眼」と呼ばれたクワン警視の力を借りたいという。クワン警視の頭にはカチューシャのような輪っかがつけられた。
ディスプレイの上半分が白地にYESの文字、下半分が黒字にNOの文字となっている。クワン警視がYES・NOで答えてくれるだけで、ロー警部たちの捜査の大きな手助けになるという。
そして、ロー警部は5名を前に事件の経過を話しはじめる。

終章「借りた時間に」は、返還される30年前の1967年の話。クワンが警察官として働き始めた年だ。
香港近代史では、労働者と資本家の間の軋轢は、中国とイギリスの国家間の軋轢に投影される。この時代はイギリスが民衆の非難の矢面に立つ。返還後は事情がまったく異なる。民衆は中国政府の締め付けに苦しむことになるのだ。

そのほか「任侠のジレンマ」「クワンの一番長い日」「テミスの天秤」「借りた場所に」のいずれも傑作である。→人気ブログランキング

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