その犬の歩むところ ボストン・テラン
犬は主人のピンチに身を呈して助けようとする忠誠心がある。物語は犬の鑑ともいうべきギヴとともに、アメリカを縦横に旅する。犬の視点は抑え気味にして、ギヴにかかわる人びとを描くことで、ギヴの愛らしさや善意や忠誠心が描き出されている。
![]() ボストン テラン/田口俊樹 訳 文春文庫 2017年 |
アンナは交通事故に遭い脳が損傷され嗅覚が過敏になってしまった(カリフォルニア)。
ある雨の夜に老犬がアンナのモーテルに現れた、首輪から名前はギヴとわかった。アンナは生まれてきたギヴの息子にもギヴと名付けた。
モーテルにタトゥーだらけの兄弟が訪れた。ハードロッカーの兄弟は父親から盗みを教えられていた。そして兄はギヴを盗んだ。
タトゥー・アーティストのルーシーは、弟のイアンと意気投合し、ニューオリンズで一緒に生活をすることにした(ダラス)。ルーシーはギヴを連れて車でニューオリンズに向かい、ミズ・エルの家で暮らし始めたが、後から来るはずのイアンは行方不明となった。
ハリケーン・カトリーヌがニューオリンズを襲ったとき、ギヴはルーシーを助けよう身を呈したが、ルーシーは洪水に流され命を落とした。
イラクで片方の腎臓を失ったディーンは、シルバー・スター(銀星賞)を授与された戦争ヒーローであった。
ディーンがケンタッキーの暗闇を車で走っていると突然ギヴが現れた。
どのような3年間を送ったか不明でだが、プラスチックの檻から脱出したばかりのギヴは瀕死の状態であった。ギヴにはマイクロチップが埋め込まれていて、住所はニューオリンズ、名前はギヴ、飼い主はルーシーと判明した。
ディーンはニューオリンズに向かった。ミズ・エルの家に近づくと、ギヴは車から飛び降りて、カトリーナの爪痕が残る家に突進した。
ミズ・エルの息子で警察官のレイファーからギヴの過去を聞かされ、ディーンはギヴに関わった人物に会って、本を書くことを決意する。
イアンは兄に殺されたのではないかとレイファーはいう。ディーンはオクラホマ刑務所にいる兄に面会した。
ディーンは、退役軍人たちのトレーラーハウスが集合しているカリフォルニアのキャンピング・カー・パークに向かった。イラクで亡くなった仲間の兵士の父親に逢うためだ。ディーンはイラク戦争の英雄として歓待を受けた。
その公園で火事が起こり、軍人の体の不自由な息子が巻き込まれ、収拾がつかなくなった。
テレビで火事に立ちむかうディーンとギヴのことを知ったアンナは駆けつけた。ギヴは行方が分からなくなっていた。ここでアンナの異常なほど過敏な嗅覚が頼りになる。
そして、物語は大団円にむかう。→人気ブログランキング
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