ミスター・マジェスティック エルモア・レナード
『オンブレ』(エルモア・レナード著)の訳者解説のなかで、村上春樹が本書を勧めていた。
マジェスティックという名前は、日本語ならば三文字の漢字で表される由緒正しい公家の名前に相当するのではなかろうか。そんなマジェスティックはカリフォルニアのメロン生産者で、ガソリンを3リットルしか入れないくらい、金回りが悪い。さぞや、ショボくれたオヤジかと思いきや、ページが進むうちにそれが見込み違いだったことがわかる。ベトナム戦争も刑務所暮らしも経験している怖いもの知らずの男だ。
ミスター・マジェスティック エルモア・レナード/高見浩 文春文庫 1994年 |
メロン収穫期の農場ではメロン摘みの労働者が大勢必要である。幸い、マジェスティックは、渡り労働者のナンシーたちを雇うことができた。
マジェスティックが警察に検挙されたのは、飲んだくれの白人たちを売り込もうとする悪徳手配師コスパを銃で脅した容疑だという。拘置所には、これまでに7人を殺していて一度も有罪になったことのない黒人の殺し屋レンダがいた。
裁判所への護送途中に、マジェスティックたちを乗せたバスをレンダの手下が襲い、レンダとマジェスティックは逃走した。撃たれた保安官補のポケットから手に入れた鍵でマジェスティックは手錠を外し、手錠をつけたままのレンダを警察に引き渡そうとした。
そこへ、レンダの情婦・白人のワイリーがジャガーで現れ、マジェスティックはワイリーとレンダを銃で牽制しなから警察署に連れて行こうとしたが、逃げられてしまった。
プライドが傷ついたレンダは、手下とともにマジェスティックの命を奪おうと、家とメロン集積所を囲んでいる。警察は今度こそレンダをとらえて有罪にしようと、躍起になって遠まきに監視する。一方、迎え撃つマジェスティックはナンシーと家の中で息を潜めている。
先手の攻撃を仕掛けようと、ナンシーが運転するピックアップの荷台にマジェスティックを乗せて敷地から飛び出す。まんまとレンダたちを山岳地帯に誘い込んだマジェスティックは、レンダの手下を次々に射殺していく。鹿撃ちで山岳地帯の地形は頭の中に入っているのだ。
レンダが逃げ帰った別荘に、ピックアップで乗り付ける。そして、銃撃戦がはじまる。
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オンブレ/新潮文庫/2018年3月
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