ラム・パンチ エルモア・レナード
エルモア・レナード(1925〜2013年)は、味のある悪党を書かせたら右に出る者はいないとされる大御所。最近『ラブラバ』の新訳版(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2017年12月)が出たと思ったら、出版社は違うが、『オンブレ』の訳本(新潮文庫、2018年1月)が突然出版され、レナードのリバイバル・ブームがやってきそうな気配だ。
本書は、映画『ジャッキー・ブラウン』(クエンティン・タランティーノ監督、1998年)の原作である。タランティーノが惚れ込んだ小説というから、面白くないはずがない。カクテルの名前である「ラム・パンチ」は、フロリダからバハマ諸島あたりで「取引」のことを指す。
![]() エルモア レナード/高見浩 角川文庫 1998年 ✳︎10 |
オーディルのマシンガン・トークからはじまる。
武器売買で荒稼ぎしているあまり黒くない黒人のオーディルと、刑務所から出所したばかりの白人のルイスは、デトロイト出身ということで意気投合した。信用のおける相棒が欲しいオディールは、マックスの保釈金立替会社で、取り立ての仕事をはじめたばかりのルイスを、仲間に引き入れたいのだ。
一方、パームビーチ空港では、バハマ往復便から降りてきた三流航空会社のキャビン・アテンダント、ジャッキー・パーク44歳が颯爽と歩いていく。10歳は若く見える、スタイルも悪くない、かなりいい女だなどと言って、当局のニコレットとタイラーが、ミズ・パークを待ち構えている。ジャッキーはふたりに呼び止められ、持っていたトランクから現金5万ドルと42gのコカインが出てきた。高額な現金の運搬には届出が必要だ。オーディルが1万ドルの保釈金を出して、マックスがジャッキーをむかえに行った。
オーディルは銃を売って儲けた金を、すべてバハマのフリーポートにある貸し金庫に預けている。その金を国境を越えてアメリカに持ち込む役をジャッキーに頼んでいたのだ。それが今回はコカインが紛れ込んでいた。
ところで、オーディルには愛人が3人いて、別々の家に住まわせている。若くて料理の上手い黒人のシェロンダと、セックスの技に長けている熟年の黒人シモーヌ、グラマーな白人女のメラニーだ。
ジャッキーはマックスと組んでオーディルの金をすべていただく計画を立てた。
ジャッキーは、金の運搬は今回で最後にしようとオーディルを丸め込み、ニコレットにはオディールの武器販売の現場を押さえさせると話す。
ジャッキーのシナリオは、オーディルが当局に射殺されることである。そうなればジャッキーとマックスは金の行方についてしらを切り通すことができるのだ。
そして、ジャッキーとマックスの一世一代の芝居がはじまる。
用意周到そうだけれど詰めが甘いオーディル、ムショ暮らしで頭が回らなくなったルイス、手柄を立てようと功を焦りジャッキーに出し抜かれてしまう若いニコレットとタイラー、妻と別れジャッキーに心寄せるマックス、画廊を経営するマックスの妻ルネー、オーディルの3人の女たち、そして冷静沈着で魅力いっぱいのジャッキー。南国フロリダを舞台に個性豊かな面々が繰り広げる極上のクライムサスペンスだ。→人気ブログランキング
オンブレ/新潮文庫/2018年3月
ラブラバ/ハヤカワ・ミステリ/2017年
ラム・パンチ/角川文庫/1998年(『ジャッキー・ブラウン』DVD)
ミスター・マジェスティック/文春文庫/1994年
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