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2018年5月16日 (水)

翼を持つ少女 BISビブリオバトル部 山本 弘

ビブリオバトルをテーマにしたライトノベル。
ビブリオバトルとは、本について意見を戦わせたり語り合うことが、新たな読書に向かわせるという考えのもとに、立命館大学の谷口忠大によって考案された知的書評合戦のこと。
【ビフリオバトルの公式ルール】ビブリオバトル普及委員会
知的書評合戦ビブリオバトル公式サイト
1.発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
2.順番に一人5分間で本を紹介する。
3.それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分行う。
4.全ての発表が終了した後に、「どの本が一番読みたくなったか」を基準とした投票を参加者全員で行い、最多得票を集めた本を『チャンプ本』とする。

本書の主人公、伏木空(ふしきそら)は、中学生の時に、好きな男子にラブレターを送ったことが原因で、いじめられるようになった。
いじめを知っている生徒がいない高校へ進学したかった空は、公立高校へは進学せず、私立の美心国際学園(BIS)に入学した。BISは制服がなく髪の色も自由、おおらかな校風なのだ。
空は無類のSF好き。そんな空が同じクラスの埋火武人(うずめびたけと)に誘われて入部したのが、ビブリオバトル(BB)部である。
女性のSF好きは珍しいが、空のSFに対する知識も情熱も生半可なものではない。

武人は埋火酒造の御曹司で、武人の祖父の蔵書にはSF小説が多数あった。武人はSFにはまったく興味がなくノンフィクションしか読まなかったが、空の影響でSFに目を向けるようになる。

Photo_20201203083901 翼を持つ少女 上 
BISビブリオバトル部1
山本 弘
創元SF文庫
Photo_20201203084001 翼を持つ少女
BISビブリオバトル部1
創元SF文庫
2016年

ビブリオバトルのデビュー戦で散々な結果に終わっった空が悔やんでいると、武人は空を諭した。
「ビブリオバトルで選ばれるのはあくまでチャンプ本であって、チャンピオンではない。チャンプの栄誉はその発表者ではなく本に与えられる。発表者の良し悪しを競っているわけじゃない。あくまで、本が主役なのだ」と。
というのは建前で、チャンプ本をプレゼンテーションした選手は、当然、勝利の栄誉に浴する。

BIS高のBB部の色の黒い混血の女子部員が、双子沢高校社会学研究会の部員から、人種差別的な言葉を投げかけられた。この事件が発端となって、両校はビブリオバトルで戦うことになった。

空は出場しない予定だったが、やる気満々で自分から出場を志願した。空が取り上げた本は、本書で何度か取り上げられるエドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』。フェッセンデン博士が実験室内に宇宙を作り出すSFの短篇である。

本書にはビブリオバトルのほかにもうひとつのテーマがあり、それは人種差別である。
関東大震災時の朝鮮人の虐殺について語られ、この事件にこだわりすぎるきらいがある。また、性的な描写も掲載され話題にのぼった『アンネの日記 増補版』がバトル本に取り上げられている。
なにしろ、144冊の本について触れられていて、本好きには見過ごせない内容になっている。本好きというのは、本のタイトルが並んでいるだけで、その本を読んでみたいと思うもなのだ。→人気ブログランキング

翼を持つ少女
『世界が終わる前に』
『幽霊なんて怖くない』
『君の知らない方程式』

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