『ネバーホーム』 レアード・ハンド
農場で暮らす主婦コンスタンスは、夫バーソロミューの代わりに北軍の兵士として南北戦争(1861〜1865年)に出征した。理由は夫の体が弱かったから。
女性が南北戦争に参加した記録はいくつもあり、そうした女性の手記を著者は片っ端から目を通したという。
コンスタンスが語るかたちで描かれていて、文法的には頼りないところもあるが、そのたどたどしさによって、かえって主人公の不安な胸の内や出口の見えない戦争の理不尽さが伝わってくるようだ。男の集団の中で、女であることを見破られてはならない、あるいは弱みは見せられないという状況が、特異な視点を生みだしている。
朝日新聞出版 2017年12月
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コンスタンスはダーク郡出身のアッシュ・トムソンと名乗った。アッシュは射撃の腕前が優れていて、腕ずもうでは簡単に相手をやっつけた。
野営地の近くの沼の水を飲んで腹痛に見舞われ、10分に1回しゃがみこまなければならなくなったときに、バーソロミューから農場の土を送ってもらい、それを食べて治した。軍服を着た写真を送ったり、近況を報告したり、何度も書簡で夫とのやりとりをする余裕はある。
女性とバレはしまいかと気がかりで、2度にわたって同性に見破られはしたが、主人公の主観では男たちにはばれていない。
ある朝アッシュは人を撃った。まわりの男が撃たれて死んでいくことにも遭遇した。
戦闘で腕を負傷し腕がどんどん腫れた。意識が朦朧としたなか、もと看護婦の家にたどり着き。3週間たつと腕が使えるようになった。看護婦は一緒に暮らさないかと持ちかけた。そのレスビアン女の執拗な要求に従わなかったばかりにスパイに仕立て上げられ、瘋癲院での悲惨な生活を強いられた。
戦争は泥沼化し終わる気配がなかったので、コンスタンスは故郷に帰ることにした。
帰途の途中で、将軍のいとこが埋葬されている屋敷を尋ねると、品のいい女主人が手厚くもてなしてくれた。女主人の弟である中尉の手紙を見せてくれた。
「わが隊にには男に変装した若い女がいて、勇敢に戦い功績をあげていたが、女と発覚すると、いじめを受けた。その女がお前に会いに行く気がする」と書いてある。コンスタンスは高く評価してくれていたことに感激する。
郷里の牧場は無残に荒れ果て、ゴロツキの男たちがバーソロミューを顎で使っていた。コンスタンスはゴロツキどもを銃で撃とうと作戦をたてる。 →人気ブログランキング
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