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シャーデンフロイデ

本書のテーマは、人間性(とくに日本人の)を裏側から覗くと見えてくるのはなにかである。シャーデンフロイデ(Schadenfreude)とは「他人の不幸を喜ぶ」というドイツ語。他人が失敗したときに、思わずわき起こってくる喜びの感情のことだ。「ざまあみろ」という感情であり、「隣(他人)の不幸は鴨(蜜)の味」ということわざのことであり、ネット・スラングの「メシウマ(他人の不幸で飯が旨い)」に相当する感情のことである。

Dc7ab971a2cc4463ad68c4abd220777a シャーデンフロイデ  他人を引きずり下ろす快感
中野信子
幻冬社新書 
 2018年

ほとんどすべての人間は、目立つ人が失敗することを社会正義だと信じているという。人の脳はだれかを裁きたくなるようにできている。
自分だけが正しくて、ズルしている誰かが許せない。そんなやつに対して暴力をふるっても構わない。そんな心理状態で起こされる行動がサンクション(制裁)である。
不謹慎な人を検出して攻撃するのが、シャーデンフロイデという感情と考えることができる。サンクションが起こりやすいのは、大きな天災があった場合だという。

社会的排除の標的となる人に共通するのは、「一人だけいい思いをしていそうだ」「得をしていそうだ」「一人だけ異質だ」という条件を持つ。誰もがこの条件に当てはまるから、誰でも標的になりうる。相手の不正を許さないのは、協調性の高い人である。

日本人が集団の協調性を尊ぶのは、稲作と災害の多さによる。稲作も災害からの復興もお互いの協力がないとうまくいかない。そうした遺伝子をもつ人が淘汰されて残ってきたのだろうという。

ネットで行われているのは、悪いところを無理やりにでも見つけ出して悪者を設定し、我が身は大勢が支持するはずの正義を代表する立場において、悪者を容赦なく攻撃する。
向社会性が強い人にとって愛と正義は最も重要なもの。しかしそれによって不寛容な社会が作り出されることもある。愛と正義のために、合理的な解決法が見えなくなってしまう。

著者は、戦争ほど非人道的なものはないというのは逆ではないかと主張する。人として守るべき道を進んでしまうからこそ、違う道を進んでいる人を許せず、争いに発展する。戦って生き延びてきた祖先のDNAを継いだ人間は戦うことが大好きで、戦うことによってしか発展し、生き延びることができなかったというのが根拠である。

あらゆる紛争は干渉している側が愛と正義に立脚しているという認識を持っているという。ネットで日々起こっている不寛容のスパイラルに警鐘を鳴らす。 →人気ブログランキング

シャーデンフロイデ  他人を引きずり下ろす快感/ 幻冬社新書/2018年
サイコパス/文春新書/2017年
ヒトは「いじめ」をやめられない/小学館新書/2017年

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