ナンシー関の耳大全 77 武田砂鉄 編
ナンシー関の芸能評論はもはや伝説である。
かなりきつめの芸能人評には、一言一言にごもっともとうなづいてしまう。切り口は鋭く独創的で、比喩は的確、神がかっているといってもいいくらいの説得力だ。時差はあっても古さはない。それだけキモを掴んでいたということだ。
もちろん現れるはずもないのだが、未だにをナンシー関に比肩するテレビ批評家は現れていない。芸能人を誰彼かまわず俎上にあげて切りまくり、見方によっては喧嘩を売っているという意味でだ。
ナンシー関の代名詞だった消しゴム版画は多色刷りになり、プチジャンルとして確立されつつあるようだが。。
ナンシー関の耳大全77 ナンシー関 朝日文庫 2018年 |
本書は『週刊朝日』に掲載されたコラム「小耳にはさもう」の450編ほどから、選りすぐりの77編を、武田砂鉄が選んだ。武田砂鉄は何者なのか?
以下wikipediaより。
〈フリーライター。……2015年4月、初の著作『紋切型社会』を上梓。同書で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。2016年3月には第9回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞した。〉
巻末には、編者が本書を編むに至った経緯が、「わたしたちの大切な公文書」というタイトルで、長めに書かれている。〈半永久的な(ナンシー関の)文書の賞味期限を更に先延ばしにしたいと思った。〉というのが動機だ。
ナンシー関らしさが横溢する文章を以下にピックアップする。
1993年に、川崎麻世との不倫が発覚したときに、斉藤由貴の記者会見について書いたもの。
〈こういう言い方はどうかと思うのだが、(斉藤由貴)は「目がイッてしまっている人になっていたのである。
今回の記者会見でも、斉藤由貴は「イッた目」をしていた。何か質問をされると、斉藤由貴は視線を虚空にさまよわせたまま、どことなくポエジーな言葉つきの答えを「イッた目」のまま発するのだ。……
芝居の役を演じたときに、"人が変わる""何かが憑く""トランス状態になる"というようなことを、特に舞台役者においては「天賦の才」と尊ぶようである。……
斉藤由貴の目のイキ方はそうゆう職業病のレベルではなく、もっと大変なものだ。何つったらいいのか、自己を過剰に認識するあまりに、とでも言おうか。それは演劇部の女子高生なんかにもいるタイプである。技術がないから臭い新劇じみた表現になってしまったりするのと同じように、斉藤由貴も器量がないから目にばかりが出ちゃうんだろう。〉そして、斉藤由貴に詩を書くことを勧めてコラムは結ばれる。
このコラムの行間には、〈こいつまたやるぞ、きっと。〉というニュアンスが隠れているように思う。→人気ブログランキング
ナンシー関の耳大全 77/武田砂鉄編/朝日文庫/2018年
語りあかそう/ナンシー関/河出書房文庫/2014年
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