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『IQ』ジョー・イデ

通称IQと呼ばれるアイゼイア・クィンターベイは、ロサンゼルスに住むもぐりの探偵である。アイゼイアがどのようにして探偵になったかの過去(2005年〜06年)と、事件を捜査する現在(2013年)のふたつの時間軸で物語は進行する。
本作は、2017年、ミステリ文学賞の最優秀新人賞を立て続けに受賞した。さらにアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞および英国推理作家協会(CWA)賞にもノミネートされた。登場人物のキャラクターがよく書けている傑作だ。
すでに第3弾まで出版されている「IQシリーズ」の第1弾。

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
IQ
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ジョー・イデ/熊谷千寿 訳
ハヤカワ・ミステリ文庫
2018年6月
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頭脳明晰なアイゼイアは目の前で兄が交通事故で亡くなってから経済的に立ち行かなくなり、高校を中退せざるを得なくなった。中退後は様々な職業に就き、探偵業に必要なノウハウを身につけていった。ボランティアのつもりで揉め事を引き受けているうちに、評判が評判を呼んで、大きな事件の解決を頼まれるようになった。
相棒を組むドットソンは、兄亡き後、家賃の支払いに苦労していた時に、アパートに転がり込んできた高校時代の同年生。腐れ縁でつながるチビの小悪党だが憎めない性格だ。

依頼された事件は、ラップ・ミュージシャンの超大物カルの命を狙う相手を突き止めること。スランプに陥っているカルは、アルコールと薬漬けで自宅に引きこもる日々が続いている。レコード会社のオーナーや取り巻きはニューアルバムの作成に取り掛からせようと躍起となっているが、カルは使い物にならないくらいに憔悴している。

アイゼイアとドットソンは、ロサンゼルスの高級住宅地にあるカルの豪邸に向かう。そこで見せられたのは、防犯カメラのビデオに収められた、巨大なビット・ブルに襲われ間一髪で逃げおうせたカルの姿だった。カルはこの襲撃の裏には前妻がいると見ていた。

アイゼイアはシャーロック・ホームズばりの推理で犯人をつきとめた。犯人は犬のブリーダーで殺人巨大犬を飼っている、銃のコレクターの自称スキップ。高校生の時から犯罪歴があって、叔父の銃砲店に勤めたことがあるが、銃の横流しで逮捕されている。なんでもやらかすソシオパスだ。スキップを操る黒幕がいる。
巨大犬はシャーロック・ホームズ・シリーズの『バスカヴィル家の犬』をイメージしているのだろう。

アイゼイアには悔やんでも悔やみきれないことがふたつある。これは次作に受け継がれていくのだろう。
ひとつは、兄を目の前で死なせてしまったこと。もうひとつは、黒人とメキシカンのギャング同士の攻防戦で、幼かったフラーコの頭を流れ弾が貫き、半身不随にさせてしまったことである。
アイゼイアはグループホームから社会に出てくるフラーコの面倒をみるために、コンドミニアムを手に入れようとしている。そして兄を轢いたホンダ・アコード・プレミアムに乗っていた人物を必ず探し出すと心に誓っている。→人気ブログランキング

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