バスカヴィル家の犬 コナン・ドイル
本作はシャーロック・ホームズ・シリーズ4編の長編のうち最高傑作と評される。1901年に発表されたが、古さを感じさせない緻密で充実した内容には驚くばかりだ。舞台はロンドンとバスカヴィル家の屋敷がある不毛の地ダートムアである。
バスカヴィル家の犬 アーサー・コナン ドイル /駒月雅子 角川文庫 2014年 |
急逝したチャールズ・バスカヴィルは、自由党候補者として有力視されていた人物だった。走ったことが心臓麻痺を招いた。チャールズの遺体から20ヤード離れたところに巨大な犬の足跡がくっきりと残されていた。そもそも殺人事件なのか?
バスカヴィル家の遺言執行人であるモーティマー医師が、バスカヴィル家から預かった文書をもって、ホームズを訪ねてきた。
文書によると、その昔、傲慢無比だったヒューゴー・バスカヴィルが巨大犬に喉を噛みちぎられ悲惨な死を遂げた。それ以来、一族に不運な死に方をした者や不可解な最期をむかえた者が何人かいて、バスカヴィル家の魔犬伝説として伝えられているという。
遺産相続人のヘンリー・バスカヴィルが、カナダからロンドンのホテルに着くと手紙が届いた。
手紙には、「命と正気を重んずるならば、モアには近づくな。」と記されていた。ムアだけはインクの手書きの文字、あとは新聞の切り抜きの文字である。
ミステリなどで、たびたび登場する新聞の切り抜き文字の脅迫状は、本書が嚆矢と思われる。
サー・チャールズの死もさることながら、このわずか2日間に不可解なことが次々と降って湧いた。新聞の文字を切って貼り付けた手紙、ヘンリーの動向を偵察する顎髭の男、ヘンリーの新しい茶色い靴と履き古しの黒い靴の片方ずつが消え、新しい靴が戻ってきたこと。
場面はロンドンからムアに変わる。
まずは、バスカヴィル邸の執事はアルコール中毒でなにやら不穏な行動をとっている。
植物学者と称する男は美しい妹と住んでいて、怪しい。
近隣との訴訟に全財産をつぎ込む訴訟三昧の偏屈老人とその娘。
さらに、ムアには脱獄囚が逃げ込んで潜んでいるという。
農民たちからたびたび寄せられる、ムアに奇怪な野獣が現れるという証言。ワトソン自身も異様な咆哮を2度聞いた。
こうゆう奇々怪々の状況のなかで物語は佳境に突入する。
ホームズはホテルに手紙が送られてきた段階で、すでに犯行の目星がついたというのだから、その天才ぶりがわかる。→人気ブログランキング
バスカヴィル家の犬/コナン・ドイル/駒形雅子/角川文庫/2014年
緋色の研究/コナン・ドイル/駒月雅子/角川文庫/2012年
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