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アメリカにいる、きみ チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

著者はナイジェリア出身の女性。鋭い感性で綴られた知性あふれる文章は読む者を引き込む。ストーリー・テラーと呼ばれるにふさわしい。デビュー以来、旺盛に生み出された作品は、数々の文学賞〈O・ヘンリー賞(2003年)、コモンウェルス賞(2005年)、オレンジ賞(2007年)、米国批評家協会賞(2013年)〉を受賞している。
本書は翻訳者が選抜した日本オリジナルの短編集で、著者のアドバイスを受けたという。

「アメリカにいる、きみ」
きみという二人称で書かれている。
きみはナイジェリアからアメリカに行き公立のカレッジに通うことになったが、おじさんの性的要求を拒んでコネチカット州の小さな町のレストランに転がり込んだ。
大学へは通えず、給料とチップの半分を故郷に仕送りしたものの、手紙は書かなかった。白人の学生と付き合うようになり、やがて両親に紹介され好意的に迎えられた。
首に何かが巻きつくような感じがしてそれが薄れる頃、手紙を書いた。父親が5か月前に亡くなったことを知った。恋人は、6月以内に戻らなければグリーンカードの権利をなくすからと、何度も念を押した。


アメリカにいる、きみ
アメリカにいる、きみ

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チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ
河出書房新社 2007年 ✳︎10
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「アメリカ大使館」
難民ヴィザを発行してもらうために、ラゴスにあるアメリカ大使館の列に何時間も並んでいる。
その女性は、昨日子どもを埋葬し、一昨日ジャーナリストの夫を国外に逃走させた。その前の日、彼女の生活はいつもと変わりなく、車で勤め先の小学校から帰宅した。その夜、男3人が夫を探して家に乱入してきた。帰り際に息子を銃で撃った。
列のすぐ後ろの若い男から、面接官の目をまっすぐ見ること、口ごもらないこととアドバイスを受けた。息子が殺されたことを何度も訴えるが、面接官は自分の命が狙われている証拠を示すようにという。O・ヘンリー賞受賞作。

「見知らぬ人の深い悲しみ」
チネチェルムは9年前に起こった恋人の悲劇的な事件から人が変わってしまった。
それを乗り越えようと、ロンドンでデートすることになった。同じナイジェリア人のオディンはハンサムで、話はいい具合に盛り上がっていく。長い名前を省略してオディンと名乗っているといった。それを知って付き合うのをやめた。

「スカーフ-密かな経験」
市場で暴動に巻き込まれ無人の家に隠れると、市場に店を出している女と一緒だった。チカはアメリカの医大に通ってると自己紹介した。モスリムの女は子どもが5人いて、授乳のため乳首のひび割れで悩んでいるという。
チカが外に出ようと窓によじ登ったときに腿に傷を負った。女のスカーフを借りて縛った。暴動が収まって別れしなに、スカーフをもらった。

「半分のぼった黄色い太陽」
ビアフラ戦争をテーマにした作品。同名の長編小説がある。
内戦で邸と身分を奪われた裕福だったイボ族の一家を描いている。

「ゴースト」
71歳の元大学教授が年金のことを訊ねるために大学に行ったときに、かつての同僚に出会った。戦争に巻き込まれて死んだと思われていた。
往時の勢いをなくして色あせた大学町で、支給されることのない年金を待ちながら、どのような生活を営んでいるのか知りたいと、その男は訊く。

「新しい夫」
ナイジェリア人の医者と結婚し、ニューヨークに着いた。翌朝キスをされて市場のゴミの山の臭いがした。両親が死んでおじさんに育ててもらい、数週前におじさんに紹介された相手だ。アメリカに住むナイジェリア人で医者だぞと、掘り出し物のような言い方だった。
前に結婚していたことを知らされて嫌になったが、行くところがない。

「イミテーション」
妻はアメリカに住んでいる。夫は50人の有力なナイジェリア人実業家の1人に数えられるほど成功している。夫は仕事や休暇でときどきフィラデルフィアの自宅に帰る。ナイジェリアの家に女が出入りしているという噂を聞いた。ママ友は今更国には戻れないという。子ども達をあの中に混ぜることはできないという。
妻はナイジェリアに帰って暮らしたいと夫に言う。

「ここでは女の人がバスを運転する」
ケンは安アパートに住んでいて、稼いだ金のほとんどは仕送りしている。
ある朝バスに乗ると黒い肌の女性運転手がにこやかに話しかけてきた。ケンの生活は張り合いのあるものへと一変する。

「ママ、ンクウの神さま」
主人公はアメリカの大学でアフリカ文学を教えている女性。父親はイボ族、母親はイギリス人。
父親の郷里の祖母のもとで休暇を過ごした幼き日を綴る。

なにかが首のまわりに/チママンダ・ンゴーズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出文庫/2019年
男も女もみんなフェミニストでなきゃ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2017年
アメリカーナ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2016年
明日は遠すぎて/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2012年
半分のぼった黄色い太陽/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2010年
アメリカにいる、きみ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2007年

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