女ぎらい ニッポンのミソジニー(文庫) 上野千鶴子
なんでこんな良書が文庫にならないのかと、嘆いたのが2週前。
それが伝わったかのように、『女ぎらい』の文庫が朝日文庫として出版された。オリジナルが文庫部門のない紀伊国屋書店からの出版なので、また、オリジナルを手がけた編集者にただならぬ思入れがあって、再三の文庫化のオファーを著者もオリジナル本編集者も断ってきたという。なるほどそういうことだったのか。
女ぎらい ニッポンのミソジニー 上野千鶴子 朝日文庫 2018年 392頁 |
ミソジニーの主犯は紛れもなく男であるが、共犯者は女だ。男にとっては「女性蔑視」、女にとっては「自己嫌悪」として働く。ミソジニーは重力のように蔓延していて、男も女もミソジニーから逃れられない。
ミソジニーは、「ホモソーシャル」「ホモフォビア」「ミソジニー」の三点セットで成り立っているというのが本書のキモである。文庫には、「諸君!晩節を汚さないようにーセクハラの何が問題か?」と「こじらせ女」の項が追加され、一層、迫力を増した内容になっている。
「諸君!・・・」では、ミソジニーを語るとき、最近日本で頻発するセクハラ関連事件を看過するわけにはいかないというのが著者の姿勢だ。
ハリウッドで起こったセクハラの「#Me Too」運動は、日本でもささやかではあるが引き継いでいる。その実例を列記し、もちろんミソジニーが根底にあるとする。
「こじらせ女子・・・」では、『女子をこじらせて』(雨宮まみ著 2015年文庫化)についての紹介が主な内容になっている。AVを通して理解に難渋する女性のミソジニーが語られている。
巻末にある自らのミソジニー体験を踏まえた中島京子の解説文が、本書を一段と引き立たせている。
本書は、ミソジニー、セクハラ、フェミニスト関連の、間違いなく教科書である。→人気ブログランキング
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