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2018年12月

『the four GAFA』四騎士が創り変えた世界 スコット・ギャロウェイ

GAFA(四騎士)とは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのこと。
かつてのビッグスリー、フォード、GM、クライスラーは、GAFAに取って代わられた。これらの4社は、ビッグスリーに比べ従業員数は半分以下だが株価は10倍以上であるという。
2018年8月、アップルの株式時価総額が日本の国家予算に匹敵する1兆ドルに達した。GAFAは世界を支配する手のつけられない怪物というイメージがつきまとう。
本書はGAFAがどのようにして繁栄を手に入れたか、どのようにしてその繁栄を維持していこうとしているのかについて、自らもIT企業を経営する業界の裏側を知る著者が、多視点から解説している。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
スコット・ギャロウェイ/渡会圭子
東洋経済新報社 2018年8月
✳︎10

【グーグル】
グーグルはいくら費用がかかっても「世界の情報」を整理し、提供することをミッションとしている。
まずは、すでにウェブ上にある情報から始め、その後すべての場所(グーグルマップ)、天文(グーグルスカイ)、地理(グーグルアース、グーグルオーシャン)の情報を集めた。さらに、すでに廃盤になっている書籍コンテンツと情報データを集めている(グーグル・ライブラリー・プロジェクト)。別の言い方をすれば、グーグルは世界中のすべての情報をこっそり集めて自分のものしているのだ。
検索分野で90%のシェアを占めながら、せっせと訴訟とロビー活動に励んで、独占禁止法の適応を逃れている。

【アップル】
2015年12月、カリフォルニア州で28歳の男とその妻が、職場のパーティでライフルを乱射し、14人が死に21人が重傷を負い、容疑者は警察に射殺された。FBIは犯人のiPhoneのロック解除をアップルに要求したが、アップルは裁判所の命令を無視した。これは善良な企業の対応として許されることだろうか。
ジョブスは何億ドルもの資産を持っていながら娘の養育費を支払うことを拒否した。ストックオプションの問題では、ジョブスは偽証したとも言われている。ところがジョブスは神格化されているのだ。

【フェイスブック】
フェイスブックは世界中の20億の人が使っている。モバイルアプリも備えたフェイスブックは、今や世界最大のネット広告の売り手である。ほんの数年前にグーグルが従来のメディアから広告料を奪い取ったばかりであることを考えると、これは驚くべきことである。
利用者たちの何千枚もの写真を分析し、携帯電話を盗聴機として活用し、その情報をフォーチュン500企業に売りつけている。

【アマゾン】
小売業界は大きな転換期にさしかかっている。ここ100年で農業従事者の割合が50%から4%に低下したのと同じ現象が、これから30年の間に小売業で起こるという。
アマゾンの倉庫では、ロボットが管理し人間が働いていないのだ。
売上税を払うのを拒否し、従業員の待遇が悪く、膨大な数の仕事を消滅させながら、事業革新の神と崇められている小売業者がアマゾンだ。

GAFAと他企業の違いは、一見どうということのない1つか2つの特徴であるという。グーグルはシンプルなホームページと検索結果が広告の影響を受けないオーガニック検索、アップルはデザインとアーキテクチャ、フェイスブックは写真、アマゾンは評価とレヴュー・システムである。
私たちはこれらの企業が決して善良ではないと知りつつ、最もプライベートな領域への侵入を無防備に許している。営利目的で使用されていることを知りながら、自らの個人情報を漏らしているのである。例えば、自分のグーグルでの検索履歴を振り返れば分かることだが、誰にも知られたくないことをグーグルには平気で打ち明けているのだ。

GAFAは、あまりにも急速に巨大化したものだから怖いもの知らずで、既存のルールを無視し、約束を反故にし、法律さえ捻じ曲げてしまう強引さを持つようになった。GAFAの株はつり上げられ無限に近い資金と飛び抜けて優秀な人材が世界中から集まる。その結果、GAFAはあらゆる敵を粉砕できる力を手に入れた。→人気ブログランキング

『ナイルに死す』アガサ・クリスティー

本作品は1937年に発表された。
約1世紀前のナイル川クルーズに同乗しながら、ストーリー運びの巧みさと犯人当て推理を満喫することができる。船上ミステリの元祖である。
犯人をよもや疑われないだろうという安全域においておく一人二役系。

膨大な財産を相続したリネットに親友のジャッキーが婚約者のサイモンを紹介すると、貴族との婚約が決まりかけていたリネットはサイモンを気に入ってしまい、ふたりはさっさと結婚してしまう。婚約者を奪われたジャッキーは、サイモン夫妻の前にストーカーのように頻回に現れ、復讐の機会を狙っている。しかもピストルを持参している。
ジャッキーは夫婦のエジプト旅行に姿を現し、夫妻が偽名を使ってジャッキーを振り切ろうとしたナイル川クルーズにも参加したのだった。
なぜ、極秘にしている夫婦の行き先をジャッキーが察知できるのか?

ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
ナイルに死す
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アガサ クリスティー/加島祥造
ハヤカワ文庫 2003年 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
売り上げランキング: 10,845

リネットの財産管理人はやましいところがあるから、アメリカからエジプトに駆けつける。気むずかしいアメリカの富豪の夫人とその従姉妹でリネットの父親によって破産に追い込まれた一家の娘、官能小説で有名な女流作家とその娘、さらに社会主義運動に関わる男やテロリストとそれを追う英国特務機関員の大佐など、クルーズ船に乗り合わせた人物の背景が語られ、事件に関わる人物たちのしがらみが描かれる。

略奪愛に絡む殺人事件が起こるのは作品のほぼ中間点。
ジャッキーが銃でサイモンの脚を撃ち、その銃でリネットが殺される。そのあと事件が続発して起こり、エルキュール・ポアロの謎解きがはじまる。ちなみに、ベルギー人のポアロは、自らを優れた洞察力のある「灰色の脳細胞」を持つ世界最高の探偵であるとする自信家である。

冒頭にアガサ・クリスティ自身の本作品の紹介が載っている。
〈・・・自分ではこの作品は"外国旅行物"の中で最も良い作品の一つと考えています。そして探偵小説が"逃避的文学"だとするなら、ひとときを、犯罪の世界に逃れるばかりでなく、南国の陽射しとナイルの青い水の国に逃れてもいただけるわけです。〉
作品が文学の王道から逃避していると批判されたことに対するアガサ・クリスティの反論である。→人気ブログランキング

ナイルに死す/アガサ・クリスティ/加島祥造 ハヤカワ文庫 2003年
偽のデュー警部/ピーター・ラヴゼイ/中村保男 ハヤカワ・ミステリ文庫1983年
遭難信号/キャサリン・ライアン・ハワード/法村里絵 創元推理文庫 2018年

ねずみとり/1950年
さあ、あなたの暮らしぶりを話して/1946年
そして誰もいなくなった/1939年
アクロイド殺し/1926年

『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』A・J・フィン

PTSD(外傷後ストレス症候群)による引きこもりの女性精神科医が謎を解くという未聞の設定のサイコミステリ。
主人公のアナ・フォックスは38歳の小児心理学を専門にする精神分析医。自らがパニック症候をときどき起こす広場恐怖症を抱えている。要するに引きこもりだ。
ニューヨークの高級住宅地に4階建て地下1階の豪邸に住んでいる。パンチという猫が同居していて、とんでもなくハンサムな若い男デヴィットが地下室を間借りしている。
主治医が処方する抗鬱剤やβブロカーや精神安定剤をしこたま内服し、メルローの赤をがぶ飲みする。自宅の窓からニコンのカメラで、近所の住人の様子を監視する自称"スパイごっこ"の毎日を送っている。
夫は娘を連れて1年ほど前に新居に移っていった。PTSDを患った理由を含め、その辺りの事情はおいおい語られる。なにしろ文章が上手い。

ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 上
A.J. フィン/ 池田真紀子
早川書房
売り上げランキング: 89,146
ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下
2018年9月
✴9
売り上げランキング: 79,590

望遠カメラで周りの家を窓越しに観察しているうちに、公園の向こうの家で起こった傷害事件を目撃する。
まるでヒッチコックの『裏窓』である。アナは古いモノクロ映画のファンで、ことにヒッチコックは大のお気に入り。本書はヒッチコックへのオマージュ作品だ。メルローを飲みながら薬を服用し、テレビでDVD映画を観るものだから、現実と映画のシーンがこんがらがってしまうことがしばしばある。もちろんワインで薬を流し込むのは、主治医から固く禁じられているが、そんなことはお構いなしだ。古い映画のタイトルやシーンが次々に出てきて、著者の映画のうんちくは相当なものだ。

アナは「アゴラ」というチャットルームにログインする。アゴラは広場恐怖症のアゴラフォビアからとったもの。そこには精神的な病を抱えた人々が集まっていて、アナのアドバイスは好評なのだ。
週1回は通いの理学療法士に体のメインテナンスをしてもらい、さらにフランス語のレッスンも受けているが、外にはほぼ1年間出ていない。

アナは目撃した傷害事件を解決しようとあれこれ推理し、ついには行動を起こす。ところが、家の隣の公園で傘を持って倒れているところを発見され病院に運ばれたり、バスローブ姿でカフェに現れ客と悶着を起こしたりして、その度に警察沙汰になってしまう。

精神病を患っているアル中で、近所の家を望遠カメラで観察している気味の悪い女というのがアナについての近所の評判だ。一人暮らしの寂しさに負けて狂言で殺人事件をでっち上げ、警察に通報したのではと警官に言われ、アナは憤慨する。

周りや警察の見方が正しいのではないかと一度は思ったりもしたが、誓ってもいい、事件が起こったことは事実なのだと、自分に言い聞かせる。

ところで、表紙カバーに著者の紹介文が載っていないので変だなと思った。
巻末の解説によると、その理由は、著者は現役の出版責任者であるため本名を隠し、ペンネームは性差による先入観を避けるため中性的なイメージの名前にしたという。
また、エイミー・アダムス主演で、2019年秋公開を目指して映画制作が進められているという。→人気ブログランキング

『未来を読む』AIと格差は世界を滅ぼすか

世界の知の巨人たちが未来を語る。聞き手は国際ジャーナリスト大野和基。
近未来は、トランプと北朝鮮の動向、イギリスのブレクジット、ロシアや中国の覇権主義、難民、テロなど、問題山積である。一方、遠未来は多くの人びとにとって過酷だ。科学技術の進歩が人間に明るい未来をもたらすというのは幻想であることがわかった。

未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか (PHP新書)
ジャレド・ダイアモンド ユヴァル・ノア・ハラリ リンダ・グラットン ダニエル・コーエン ニック・ボストロム ウィリアム・J・ペリー ネル・アーヴィン・ペインター ジョーン・C・ウィリアムズ
PHP新書   2018年6月
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ジャレッド・ダイアモンド(1937年〜、進化生物学者、『銃・病原菌・鉄』)
「資源を巡り、文明の崩壊が起きる」
格差によってもたらされるのは、感染症のリスク、テロリズム、移民。それらが先進国に深刻なダメージをもたらすと予見する。
ダメージを回避するには、持続可能な経済を作れるか、世界の生活水準が一定レベルの平等を達成できるかにかかっている。

ユヴェル・ノア・ハラリ(1976年〜、歴史学者、『サピエンス全史』『ホモデウス』)
「近い将来、役立たず階級が大量発生する」
今日存在する多くの職業が30年以内に消える。
今後数10年の間に核戦争のリスク、気候変動、テクノロジーによる破壊という3つの脅威に直面する。

リンダ・グラットン(1955年〜、ロンドン・ビジネススクール教授、『LIFE SHIFT』)
「人生100年時代の到来」を予見する。生き方改革を提示する。

ニック・ボストロム(1973年〜、オクッスフォード大学教授、「人類未来研究所」所長、『スーパー・インテリジェンス』)
「AI万能時代が訪れ、働き方は根本的に変革する」
AIが人間と同等あるいはそれ以上の知能を持った時に何が起こるか。

ダニエル・コーエン(1953年〜、フランスを代表する経済学者、『経済成長という呪い』)
1870年から1970年に起きたテクノロジーは中産階級にも恩恵を広くもたらした。新しいテクノロジーの恩恵を受ける人はわずか。それは経営者や投資家。テクノロジーこそが格差を生み出す根元になっている。

ウィリアム・J・ペリー(1927年〜、クリントン政権の国防長官、『核戦争の瀬戸際で』)
北朝鮮の非核化は実現しない。偶発核戦争は起こり得る。

ジョーン・C・ウィリアムズ(カリフォルニア学労働生活法センター初代所長、『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々 』)
アメリカ人の53%を占める中流階級を、「ホワイト・ワーキング・クラス」と定義する。その中産階級にいる白人が不満をもった。トランプが大統領になって、アメリカ人は社会的階級の影響についてその重要性にやっと気づいた。

ネル・アーヴィン・ペインター(プリンストン大学名誉教授、『白人の歴史』)
「アメリカは分極化の波にさらされる」
オバマが大統領になったことで、白人中間層は差別される側になったと感じた。
その考え方がトランプを大統領にした。→人気ブログランキング

『大統領失踪』上下 ビル・クリントン/ジェイムズ・パタースン

著者のクリントン元大統領は大のミステリ好きで、以前よりミステリを書きたい思っていたという。タッグを組んだのは、アメリカ・ミステリ界の大御所ジェイムズ・パタースン。
ホワイトハウス内の描写や人間関係に、その場に身をおいたものにしか書けないと思われる機微が盛り込まれている。
クリントンには、兵役を免れ、上院の弾劾裁判にかけられたという苦い過去がある。その経験が、主人公のダンカン大統領を湾岸戦争の英雄にし、冒頭で大統領弾劾の前段階である特別調査委員会の場面を設定した理由かもしれない。
ストーリーは、まるで絶叫ジェットコースターのように次から次へとスリルに富む場面が待ち受けていて、それを乗り越えていく様は小気味がいい。もちろん大どんでん返しも仕込まれている。

大統領失踪 上 (早川書房)
大統領失踪 上
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ビル・クリントン/
ジェイムズ・パタースン
早川書房
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大統領失踪 下 (早川書房)
大統領失踪 下
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越前俊弥/久野郁子
2018年12月
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

下院特別調査委員会の場面から始まる。ダンカン大統領がテロ組織「ジハードの息子たち」を率いるリーダーと取引をしたのではないかという疑惑だ。下院議長の質問に、ダンカンは大統領特権で答えないと黙秘する。緊迫するやりとりが交わされるが、実はこれはリハーサルである。

「ジハードの息子たち」が仕掛けたのは、アメリカの政府機関のコンピュータにウイルスを送り込み、すべてのファイルを根こそぎ無効にしてしまうというもの。
数日前、トロントの政府機関のコンピュータにウイルスが侵入し、痕跡を残さず消えた。この事件により、ダンカン大統領はウイルス攻撃は脅しではないと確信した。

そんな折、Tシャツにジーパンのパンク娘がホワイトハウスに乗り込んできて、ダンカン大統領に直々に封筒を手渡した。この後、ダンカン大統領はウイルスの攻撃を未然に防ぐため、ホワイトハウスから姿を消すのだった。

やがて、ロサンゼルスで生物テロ攻撃に対応できる研究所が焼け落ちた。さらに、浄水施設のコンピュータのソフトウェアがハッキングされた。これは小手調べにすぎない。
もし、政府機関のコンピュータが本格的にサイバー攻撃されれば、すべてが麻痺する。政府の機能も、銀行も交通も流通も医療も、テレビも何もかもが麻痺して、19世紀に戻ってしまう。どれだけの人が死ぬのか。集団ヒステリーが起こりパニックになる。そして敵対する国から攻撃されるかもしれない。

サイバーセキュリティーの専門家が30人集まって、刻々と迫るウイルス攻撃開始までの時間内に、ウイルスを無力化しようとする。ダンカン大統領は重症の持病と闘いながら、自国を危機から救おうと懸命に奮闘する。

テロ集団の黒幕はどこの国なのか。そして大統領の8人の側近のうち、テロ集団に情報を漏らした裏切り者は誰なのか。ジェットコースターはスピードを増して車輪から火花を散らしながら、最後の山場に向かう。

気が早いことに、ダンカン大統領には次期大統領選に立候補してもらい、次作での活躍を期待する声が多いという。テレビの大型ドラマ化が決定していると帯に書いてあるが、大ヒットは間違いないだろう。→人気ブログランキング

『アメリカーナ』チママンダー・ンゴズィ・アディーチェ

アフリカとアメリカとイギリスを舞台に、ナイジェリア人カップルの間で展開される長編ラブストーリー。ふたりの主人公はもちろん、親や親戚や友人たち、そして端役に至るまで、「キャラだちが半端ない」著者の筆力に圧倒される。全米批評家賞受賞作(2013年)。

主人公のイフェメルが13年間暮らしたプリンストンを去る前に、髪を結いにいく場面からはじまる。イフェメルがアメリカにやって来たときに、初めて自分が黒人であることに気づいた。文化ギャップや階級・人種差別、特に肌の色と髪の毛について何度も描かれる。

話はナイジェリアの最大の都市ラゴスに移る。イフェメルの通う中等学校に大学教授を母に持つオビンゼが転校してくる。イフェメルにとってオビンゼは、自分をいちいち説明する必要を感じない初恋の相手であった。
ふたりは大学に進学するが、不安定な政情のせいで教師のストライキが続く大学は機能が麻痺してしまう。大学に愛想をつかしたイフェメルは、アメリカ留学の資格を得てアメリカに渡った。オビンゼも後でアメリカに渡るはずだった。

アメリカーナ
アメリカーナ
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チママンダー・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ 
河出書房新社
2016年 ✴✳✳✳✳
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タイトルの「アメリカーナ」という言葉は、イフェメルの友人一家がアメリカに渡ることになったときに、同級生たちの会話に出てくる。「めっちゃアメリカーナになっているよね。ビシみたいに」。1年下のビシは、短いアメリカ旅行から帰ってきてから、気取った態度をとるようになり、方言はわからないふりをしたり、英単語にわざとらしい「r」音をくっつけたりした。つまり、憧憬と嫉妬と軽蔑が入り混じった「アメリカかぶれ」という意味だ。

イフェメルは、アメリカにやってきたばかりの頃、奨学金だけでは暮らしていくことができず、他人の社会保障カードと運転免許書を手に入れ、仕事を得ようとする。ところが職が見つからず、男と同衾するだけで金を手にしたことに苦悩し、オビンゼとの連絡を絶ってしまう。

イフェメルからの連絡が途絶えて苦悩するオビンゼは、アメリカ留学の書類を大使館に申請し続けたが、9・11の影響で留学の道は閉ざされてしまう。そこで仕方なく親戚のつてでイギリスに渡るが、人種差別と不法滞在がばれないかという恐怖にさらされた。
イギリスからラゴスに戻ってきたオビンゼは、ビッグマンに拾われ不動産業で成功をおさめる。やがて貞淑な妻を娶り娘が生まれ、傍目からすれば順風満帆であった。

一方、イフェメルはベビーシッターを経験し、白人男性とつきあい出しアメリカの生活に溶け込んでいく。
薬液で髪をまっすぐにして髪と頭皮を傷めながら、イフェメルは就職の面接を受ける。雑誌の出版社に採用されるが、鋭い意見を持つイフェメルはやがて周囲と意見が合わなくなり辞めてしまう。
イフェメルはブログをはじめる。人種差別と、髪の毛と肌の色の問題と、アフリカから奴隷として新大陸に渡った祖先を持つアフリカン・アメリカンと、経済的・政治的理由でアフリカから渡ってきたアメリカン・アフリカンとの微妙な関係についての、エッジの効いた内容は爆発的なアクセス数を得て、超人気ブロガーとなる。たとえばミッシェル・オバマのストレートヘアを論じる。
そんな折、友人からオビンゼの近況を聞いいたイフェメルは、オビンゼにメールを送ることにし、舞台はナイジェリアに移る。→人気ブログランキング

男も女もみんなフェミニストでなきゃ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2017年
アメリカーナ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2016年
明日は遠すぎて/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2012年
半分のぼった黄色い太陽/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2010年
アメリカにいる、きみ/C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ/河出書房新社/2007年