アメリカ 橋爪大三郎×大澤真幸
アメリカのキリスト教とプラグマティズムについて解説し、日本がアメリカを異常なまで忖度するのはなぜかを、ふたりの著名な社会学者が解き明かす。
罪のある人間を救うか救わないかは神が決めるという救済予定説のカルヴィン派こそ、アメリカ建国のベースを築いた人々であるという。
聖書には曖昧な部分があり、解釈によっては異なる読み方ができてしまう。聖書に忠実であるからプロテスタントには分派ができる。
実践的で人造的で新しいアメリカの性質はどこからきているのか。それはプロテスタントの信仰を源泉としているという。アメリカはあくまでプロテスタントの国である。
アメリカを考えるときに、本気で聖書を信じている人たちがいるという目で見て、初めてアメリカが見えてくるという。
アメリカ 橋爪大三郎 大澤真幸 河出新書 2018年 |
アメリカには、聖書が神の言葉と信じている5000万人の福音派(バプティスト)がいるからこそ、そうでない人はキリスト教と距離をとりながら啓蒙的な知識との両立をはかれる。
アメリカ人はまぎれもないキリスト教的な文化だが、同時にこれほど宗教からほど遠い世俗的な人々もいないように思える。宗教的な人とまったくそう出ない人の間を埋めるのがプラグマティズムであるという。
プラグマティズムとは、ある概念がその人の経験によい結果をもたらすのであれば、それは真であり、思うような結果をもたらさないのであれば偽であるという考え方。
なにか複数の真理があるらしいが、どっちが正しいか決着しないでよい。自分の生活にプラスならばそれを受け入れ、マイナスであれば受け入れない。
奴隷制度を除けば、アメリカはヨーロッパ諸国に比べ圧倒的に平等な国である。
奴隷制度は、アメリカのひ弱な産業が国際競争にさらされた結果である。北部は工業でやっていけそうだったが、南部は大農場経営で奴隷の労働力が必要だった。
なぜ奴隷制度になったかというと、カトリックではなくプロテスタントだったからだ。カソリックは教会がひとつしかないので、教会のメンバーは人種や社会階層を問わず同列に扱われる。プロテスタントでは教会がいくつもあるので、人種や社会階層ごとに別々の教会に行くことになる。
アメリカは自発的にアメリカを作ろうとした人々が国をつくり、移民もそれに加わった。このストーリーからはみ出す人々は、ネイティヴアメリカンとアフリカ系の人々で、これをアメリカは克服できない。アメリカにおける根深いブラックの独特の問題は日本人に理解しがたいという。
日本は福祉はいいことだと誰もが思っているが、その感覚はアメリカにはないという。
政府が税金をとって、人々の生活に必要なサービスを行う必要はない。政府がやらなくとも、自分たちが財団を作ってやるからそれで十分だという考え方をする。
アメリカ人には自分の主体性を他人に預けることを極力避けたいという意識構造がある。
アメリカのナショナリズムは、世界中の人々がアメリカ化すればいいと思っている。
いくら日本人が自国が魅力的だと信じているとしても、世界中の人々が日本人のようになるべきだと思ってはいない。ナショナリストはどんなに自分の国が素晴らしいと思っていても、それぞれだというのが特徴なのだが、アメリカは違う。
武士の伝統が途切れてから日本は迷走するようになった。武士は人の生き死にを踏まえて、人々が幸せに生きて行くことに知恵を尽くして考えるということをずっとやってきた。戦後、それをやろうとしないのは日本人の怠慢でしかないという。
アメリカへの精神的な依存度において日本は突出している。なぜこんな状況になったのか。アメリカを知ることが倒錯的なレベルから脱却する一歩である。そうすることで日本が何者であるか知ることになる。→人気ブログランキング
アメリカ/橋爪大三郎×大澤真幸/河出新書/2018年
おどろきの中国/橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司/講談社現代新書/2013年
ふしぎなキリスト教/橋爪大三郎×大澤真幸/講談社現代新書/2011年
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