縄文探検隊の記録 夢枕 獏 岡村 道雄 かくま つとむ
日本の新石器時代を特に縄文時代と呼ぶ理由は、世界の新石器時代のスタンダードとは異なり独自性が際立っているからだという。クリ、漆、翡翠、アスファルト、縄文式土器、渡来人、縄文の神と空海の密教との関係など、縄文研究の最先端を紹介する。
縄文時代は1万5000年前から2300年前まで。縄文文化は南は屋久島から北は北海道、そして歯舞・色丹まで見られる。
![]() 夢枕 獏 岡村 道雄 かくま つとむ 集英社インターナショナル新書 2018年 |
翡翠はフォッサマグナ(地殻変動)の置き土産。
糸魚川周辺で作られた翡翠の装飾品は、北は礼文島から南は沖縄まで分布している。
翡翠はステータスの象徴のようなものだったのではないか。使節のような立場の人が運んだのだろうという。
近年の縄文考古学のトピックスは「クリ」と「漆」。
クリはカロリーが高く、よく実る年と実らない年の差が少ない。さらに木材としての優位性はクリは飛び抜けていた。大きく育つという理由だけなく加工がしやすく、柱に用いられた。縄文人にとってクリはスーパーツリーだった。
北海道函館垣ノ島から出土した9000年前の漆器は世界最古である。シャーマンのような立場の人が身につけただろう、ヘアバンド、肩パッド、肘当て、腕輪、膝掛けが出土している。
縄文の漆文化は弥生時代よりも高度である。縄文の漆文化は現代につながる重ね塗りで、水銀を混ぜた赤漆も使われている。中国の塗り方はただ上から塗ったもので、弥生時代の漆は中国の手法であった。
縄文時代の漆を塗った弓矢は強く弾力性がある。しかし弥生時代の丸木弓は実用的ではない。催事に用いられたと思われる。
原油が出る地域ではアスファルトが自然に存在する。産出地は、新潟県の上越から山形、秋田県にかけての日本海側と、北海道道南の渡島。鏃とか矢柄の接着剤として用いられた。
アーティスティックな火焔土器はなぜ作られたのか。実在しないような姿に置き換えて神格化するのが縄文の特徴である。新石器時代の中国の土器は動物の写実的な文様が描かれている。縄文文化は、土器にしろ土偶にしろ写実的なものは描かれていない。
弥生時代のきっかけを作ったのは渡来人だったが、実質的な主人公は縄文人だった。
そもそも西日本では、それまで人が少なかった。縄文の全時代を通してみると、「むら」も人口も85%が東日本。弥生時代になるとそれが逆転してくる。縄文人は稲作を取り入れなかったからだ。
どのくらいの人が入ってきたか。一般的に考えられているより少なかったと思われるという。
大陸の秦の統一で敗者が新天地を求める形で、日本列島に渡ってきたのではないか。
草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしつかいじょうぶつ)は、『涅槃経』の言葉で空海が広めた。夢枕 獏は、空海はその当時残っていた縄文的なものの考え方をこの言葉で表現したのだとしている。→人気ブログランキング
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