『ブルーバード、ブルーバード』アッティカ・ロック
東テキサスの田舎町で、シカゴからやってきた黒人の男性弁護士と地元の白人女性の遺体が、町を流れるバイユーで相次いで発見される。白人が殺されてその報復として黒人が殺されるのが通常の順番であるが、逆だった。捜査にあたるのはテキサス・レンジャーに所属する黒人のダレン・マシューズ。
町には黒人の老女が経営するカフェと、大きな通りを挟んで白人の金持ちの邸宅が向き合っている。その白人はバーのオーナーで祖先はこの町を作った。
ダレンは殺された男の妻とカフェで知り合い事件を解決しようとする。黒人の公共施設利用を制限する「ジム・クロウ法」が廃止になって50年たっても、東テキサスの人種差別は以前と大して変わらない。
ハヤカワ・ポケット・ミステリ
2018年12月 ✳︎10
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ダレンは伯父が黒人で初めてのテキサス・レンジャーになったという名門の出なのだが、親族同士に確執があり、ダレン自身も妻とうまくいっていない。ダレンの農場で働く管理人の孫娘に嫌がらせをするクズ白人が銃で殺され、事件に関わった嫌疑で、ダレンはレンジャーを停職中なのだ。殺された白人は過激な人種差別組織に属し、その組織の通過儀礼は黒人を殺すことである。KKKよりもタチが悪い組織だ。
被害者の女性は白人が集まるバーで働いていた。殺された男が最後に酒を飲んでいた場所だ。ふたりは話をして男は女を家に送っていった。
妻を迎えにきた夫はふたりの仲を勘ぐって逆上し男をツーバイフォーの角材で殴って殺した。そのあと数日して夫が妻を絞殺したというのがダレンの推理だ。夫は数か月前に刑務所を出所したばかりで、刑務所内で人種差別組織のメンバーと接触したのではないかとダレンは疑った。
しかし、事件の真相は単純ではなく、過去に起こった愛憎劇が複雑に絡んでいた。
6年前にカフェの女店主の夫が銃で撃たれて殺されてるが、犯人は逃亡した3人の白人男性という目撃者の証言により、事件は捜査されないままになっている。人種に絡んだ事件が起こると東テキサスの田舎町の特殊なルールがまかり通るのだ。
ダレンはテキサス・レンジャーの誇りと意地で、妥協を拒否し事件の真相を明らかにしようとする。
物語には、歌詞やジュークボックス、エレキギター、バンドマン、演奏旅行などが描かれていて、まるでBGMにブルースが流れているようだ。
犯罪における人種差別を黒人の目からあぶり出した傑作だ。本作は2018年の3つの主要ミステリ賞(米探偵クラブ賞、英ダガー賞、米アンソニー賞)を受賞した。→人気ブログランキング
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