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2019年2月

『ニムロッド』上田岳弘

テクノロジーが先行したポストヒューマンの世界が、作中の小説の中に描かれている。小説の書き手は荷室さんことニムロッド、主人公・中本哲史の会社の先輩である。ちなみに、ニムロッドは「旧約聖書」でバベルの塔の建造において発案者とされる人物である。
中本は小さなインターネット・サーバー会社に勤めている。法人向けのサーバーの保守を提供する、契約社員を合わせて50名ほどの会社だ。
社長に金を掘る仕事をするよう命じられた。仮想通貨のビットコインを採掘せよという。かくして採掘課の課長となった中本は、余剰のサーバーマシンを活用して、ビットコインの発掘を開始する。
第160回(2019年1月)芥川賞受賞作。

ニムロッド
ニムロッド
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上田岳弘
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ビットコインは、2008年に、サトル・サカモトと名乗る人物が発表した論文が元となり、2009年から発掘が開始された。
ビットコインはその存在を保証する台帳があるだけだ。発掘は提供されるアルゴリズムに則ってPCで計算し台帳に追記する。計算したPCには報酬として新たに発行されるビットコインが送られる。
誰がいくら持っているかが台帳に記載されていて、その状態を存在すると皆で合意することでビットコインは存在することになる。
翌朝、中本が地下のサーバーでどれくらいコインを掘り当てたかをみると、日本円に換算してPC1台につき920円。余っているサーバーが11台あるから、1日10120円稼ぐ勘定になる。1ヶ月30万円だ。
創始者は新規に発行されるビットコインの上限を設けていて、掘り尽くすのは、現存する人間たちがすべて死滅するだろう2140年だという。
仮想通貨はソースコードと哲学でできているとニムロッドは言う。

中本のもとには、ニムロッドからときどきメールが届く。役に立たない「ダメな飛行機」の情報が1機また1機とシリーズで送られてくる。ニムロッドは中本の1年先輩で、文学賞の新人賞の最終選考に3回残っていずれも落ちた。最後に落選してから1年後に鬱になって、長期間会社を休み、実家がある名古屋の支社に転勤となった。

小説の中のニムロッドは巨万の富を保有している。バベルの塔を思わせる高い建築物の先端で暮らしていて、屋上には役に立たない飛行機が何台も置いてあるというマジックレアリズムの世界が展開する。

仮想通貨は、人間の欲望とテクノロジーが結びついたものだ。仮想通貨を掘ることはバベルの塔を積み上げることにつながる。バベルの塔の先端に置いた「ダメな飛行機」たちは、意味のないことに情熱を燃やすことが世の中を支えてきた、あるいは、現代社会の多くのことが将来無意味になるだろうと暗示している。そして意味のないことに意味を求めなければ、成り立たないかもしれないこれからの人類の の生き様を象徴している。→人気ブログランキング

『ノマド』ジェシカ・ブルーダー

アメリカでは、季節労働者として重労働に従事し、キャンピングカーで移動する「ノマド」と呼ばれる高齢者が増えている。ノマドとは遊牧民という意味だ。
著者はノマドの生活を体験する目的でキャンピングカーを購入し、ビーツ(砂糖大根)の収穫やアマゾンの倉庫で働き、3年間にわたるフィールド・スタディーを行って本書を書き上げた。著者が出会ったのは60歳代から70歳代の高齢者たちだ。
リタイアした高齢者やリーマンショックで被害を被った中産階級や、離婚や病気・ケガなどの危機を乗り越えられなかった人たちや、解雇されたり事業がうまくいかなかった人たちが、住宅ローンや家賃や公共料金の支払いができなくなり、車上生活に望みをかけたのだ。

ノマド: 漂流する高齢労働者たち
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仕事を求めてキャンピングカーを走らせる季節労働者は、自らをワーキャンパー(Workamper)と呼ぶ。
ワーキャンパーを採用する企業や官公庁のなかで、最も過激な求人を行ってきたのはアマゾンのキャンパーフォースだ。秋からクリスマスかけての繁忙期に、各地の倉庫でワーキャンパーを雇う。アマゾンの仕事は、時給(11.5ドル、約1300円)が高い分かなりきつい。仕事の内容は商品の梱包と仕分けだが、広い倉庫の中を毎日ハーフマラソンの距離を歩き、3か月で10キロも痩せるという。関節痛や筋肉痛に苦しむ者にはジェネリックの鎮痛剤が無料で支給される。

クリスマスが終わると、ワーキャンパーたちは次の仕事場に移動する。仕事は、農場での果物やビーツの収穫、キャンプ地の清掃、球場でのハンバーガーやビール売りなど、いずれも長時間にわたる低賃金の肉体労働だ。

ワーキャンパーは季節的な人材確保を求める雇用側にとって、きわめて便利な即戦力である。必要とする場所に、必要とするタイミングで集まってくれる。住居と一緒にやってきて、つかの間駐車パークに企業町を作るが、その町は仕事が終わればなくなる。組合が結成されるほど長時間止まることはない。また福利厚生や社会保障を要求しない。
こうした地下経済を生み出しているのは、ウェブサイトに求人広告を載せているアマゾンをはじめとする何百という数の企業だ。
企業は「雇用機会上のハンディを持つ」労働者を雇うことで、賃金の25%〜40%の連邦税控除を受けることができるのだ。

ワーキャンパーたちは、まるでスタインベックの『怒りの葡萄』のオーキーと呼ばれるオクラホマ出身の主人公たちと同じだ。『怒りの葡萄』と異なるのは、オーキーたちが目標としたのは普通の家に住むことだが、ワーキャンパーはノマド生活をその場しのぎと考えていないことだ。

高齢になれば新しい仕事を見つけることが困難になるが、キャンピングカーとスマホがあれば、簡単に仕事が見つかるとワーキャンパーは言う。
しかし、現実は様々な困難な問題が待ち受けている。例えば仕事をしていないときの駐車スペースの確保、特に住宅地では厳しい。さらに入浴の問題、水の確保など、あるいは車の老朽化や故障、自らのケガや病気など、悩みの種は尽きない。
ノマドは非白人がほとんどいない。ここにもアメリカの人種差別が顔を出す。→人気ブログランキング

『フランケンシュタイン』メアリー・シェリー

しばしば誤解されるが、フランケンシュタインは「怪物」を生み出したスイス人科学者の名前である。「怪物」には名前が与えられていない。本作は、1813年にイギリスの女性作家メアリー・シェリーが発表したゴシック・スリラー小説である。SF小説の嚆矢とも位置づけられている。

フランケンシュタイン (新潮文庫)
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イギリスの北極探検家が姉に宛てた手紙の形をとっている。探検家は、北極海で衰弱したヴィクター・フランケンシュタインを助け、ヴィクターの話を手紙に綴って姉に送る。

ヴィクターはドイツの大学で学び、「理想の人間」を作ろうと、墓を暴き死体をつなぎ合わせて怪物を作り出す。未完成の状態で怪物は実験室を逃げ出す。
怪物はドイツの片田舎で暮らす父子3人の生活を観察し、善意と寛容を学ぼうとする。森で拾った鞄から出てきた『失楽園』『プルターク英雄伝』『若きウェルテルの悩み』を読み、それぞれの感想を述べるくだりは、知性を得て、純粋な心もとうとする怪物の心情が表われている。
風貌はおぞましいほど醜悪で、身体つきは並外れてでかい怪物が、一家に認めてもらおうと姿を現すが、追い払われてしまう。
自分が認められないことに絶望し、ヴィクターに復讐しようと、ヴィクターの弟を絞殺し、その犯人としてフランケンシュタイン家の従順な女中に濡れ衣を着せ処刑に追いこむ。
さらに、ヴィクターの無二の親友を殺し、ヴィクター自身が殺人犯と疑われ牢獄に放り込まれてしまう。
怪物の心境は、揺れ幅が極端なのだ。

孤独な怪物は寂しさを紛らわす伴侶を作ってくれるように、ヴィクターに頼む。ヴィクターは一時は作ろうとしたものの、伴侶が邪悪な心を持つやもしれず、さらに子孫を残すこととなれば邪悪な一族となるやもしれない。そのような約束を請け負ったことを後悔し、約束を反故にする。

やがて、ヴィクターは兼ねてから結婚の約束をしていた最愛の人と結婚するが、新婚旅行の宿に現れた怪物に新妻が殺されてしまう。さらに度重なる不幸に見舞われたヴィクターの父親も、心痛に耐えかねて亡くなってしまう。

愛する人をことごとく失ったヴィクターは、ジュネーブを出て怪物を殺害するために、北へ向かう流浪の旅に出る。そして北極海で遭難し探検家の船に拾われる。
すべてを語り終えた、ヴィクターは船上で息を引き取る。
怪物が船に現れ、自分の創造主であるヴィクターの死をいたく悲しむ。怪物は北極圏に向かい、その後人間界には二度と現れなかったのである。
愛と悲しみと残酷さに満ちた物語である。→人気ブログランキング

『マルタの鷹』ダシール・ハメット

『マルタの鷹』は、アメリカの大衆向け雑誌『ブラック・マスク』に1929年9月号から1930年1月号に連載され、同年に単行本として発刊された、ハードボイルド探偵小説の嚆矢である。アウトロー探偵サム・スペードが、美女の頼みごとを引き受けたばかりに厄介に巻き込まれる。登場人物のキャラクターが見事に描き分けられていて、早いテンポで話が進んでいく。3度(1931年、36年、41年)にわたって映画化されている。
ただただ傑作と言わざるをえない。

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
マルタの鷹
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ダシール ハメット/小鷹信光
ハヤカワ・ミステリ文庫(改訳改訂版)
2012年

女はサンフランシスコの私立探偵サム・スペードに妹の捜索を依頼する。妹と駆け落ちしたというサーズビーと、サーズビーを尾行したスペードの同僚アーチャーは銃で撃たれて殺される。アーチャーの妻と不倫関係にあったスペードは警察に殺人の容疑をかけられてしまう。

妹の失踪は作り話で、しかもその女ブリジッド・オショーネシーは偽名を使っていた。オショーネシーはスペードに近づいた本当の理由を明かさない。
そのあと、スペードにカイロという男が接触してきたのは、スペードがオショーネシーから何かを聞き出しているとみたからだ。カイロはスペードに黒い鳥の装飾品を見つけ出したら5000ドル払うという。

さらに脂肪肥りのガットマンが手下にスペードを尾行させる。
このあたりでスペードの前に現れた人物たちの目的は、マルタ騎士団が所有していたという宝石を散りばめた莫大な価値がある装飾品を手に入れることだとわかる。

ガットマンはロシアの将軍が装飾品を所持していることを掴み、カイロ、サーズビー、オショーネシーを代理人として装飾品を手に入れようとしたが、3人はそれを自分のものにしようと策を弄したという。装飾品の表面には宝石を隠すため黒いエナメルが塗られていてる。
それぞれが自分が掴んでいる情報を明かさず、装飾品をめぐって探り合いを繰り広げている。

やがて、スペードのオフィスに胸に銃弾を受け血を流している男が飛び込んできて、スペードに包みを渡したあと事切れた。その包みから装飾品が出てきた。
3人も殺された事件を警察が黙っているはずがない。
スペードは、ガットマンとその手下、カイロとオショーネシーを前に、3人の殺人事件の犯人を警察に提供して、この事件に幕を降ろすことを提案する。装飾品のことが警察の知るところとなれば、事の収拾がつかなくなるというのが理由だった。
ここから、スペードと悪党たちとの駆け引き、警察の執拗な操作が佳境に入っていく。→人気ブログランキング

『日曜日の午後はミステリ作家とお茶を』ロバート・ロプレスティ

主人公のレオポルド・ロングシャンクスは50歳のミステリ作家。
「事件を解決するのは警察。ぼくは話をつくるだけ」と言いつつ、警察の捜査にしばしば口を出し、ある時は警察に制され、ある時は見事な推理を披露する。そして警察とのやりとりのなかに、作品に使えそうなギミックがないかとアンテナを張っている。
シャンクスの妻コーラはロマンス作家として売り出したばかり。結婚20年目で、適度に仲が良くジャブ程度の軽い嫌味を言いあう。
安楽椅子探偵ものあり、事件の推移を見物するだけのものあり、ショートショートあり、深刻でない内容の牧歌的な14の短篇からなるコージーミステリである。

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)
ロバート・ロプレスティ/高山真由美
創元推理文庫 2018年 ✴8

・シャンクスはロマンス作家としてデビューしたコーラの雑誌インタビューに同席する。インタビューは当たり障りのない内容で進み、カフェの窓の外では詐欺事件が起こり、警察がやってきて犯人が逮捕される。「シャンクス、昼食につきあう」
・ミステリ作家のコンベンションで、素人作家が酒をおごるから謎を解いてくれと数人の作家に持ちかける。議論百出し、シャンクスが誰も使ったことのないギミックを語る。「シャンクスはバーにいる」
・誤認逮捕された知り合いを助けるためにハリウッドに乗り込み、事件の謎を解く。「シャンクス、ハリウッドに行く」
・強盗に財布を盗まれたシャンクスは、凝りに凝った罠で犯人を撃沈させる。「シャンクス、強盗にあう」
・シャンクスが住む住宅街の車上荒らしが捕まる。盗品のマシンピストルがどこの家の車から盗まれたのかシャンクスが推理する。「シャンクス、物色してまわる」
・ミステリファンが集うイベントで起きた『マルタの鷹』の初版本紛失事件。「シャンクス、殺される」
・ATMから金を引き出そうとした男のキャッシュカードが機械に飲み込まれる謎を解く。「シャンクスの手口」
・シャンクスは 先達の文章をオーディブック聴き体に染み込ませ、文章をひねり出した。それが盗作だと電話の主は言う。電話の主は先達のゴーストライターだった。「シャンクスの怪談」
・馬の誘拐事件。「シャンクスの牝馬」
・シャンクスは町の建物の前の状態も前の前の状態も、上書きされずに覚えているという特技を持っている。その記憶力が強盗逮捕に役立つ。「シャンクスの記憶」
・出身大学の図書館で殺人事件が起き、寄贈したジャンクスの本がなくなった。「シャンクス、スピーチする」
・シャンクスはタクシーの運転手に妻の善意を気づかせる。「シャンクス、タクシーに乗る」
・ウィンドウズの技術サーポートから、マルウェアに感染してると電話で言われ、パソコンの遠隔操作を促されるが、シャンクスは詐欺と気づき撃退する。「シャンクスは電話を切らない」
・シャンクスは資産家の未亡人の夫の座を狙う男に忠告する。「シャンクス、悪党になる」
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『未必のマクベス』早瀬 耕

急速に成長を遂げたIT系企業のジャパン(J)プロトコルに勤務する中井優一は、東南アジアの主要都市に交通系ICカードを普及させる仕事に携わっていた。優一は高校の同級生で同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた。優一は娼婦から「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」と告げられ、その後ことあるたびにこの言葉を思い出すことになる。

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)
未必のマクベス
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早瀬 耕
ハヤカワ文庫JA
2017年 ✳︎7

商談を成功させたものの、優一は香港(HK)プロトコルのCEOに出向させられる。HKプロトコルは仕事らしい仕事は何もない、幽霊会社である。優一が手に入れた極秘文書には、HKプロトコルの歴代COEの悲惨な最期が書かれていた。それは行方不明や自殺である。
優一はJプロトコルに対して自分がスケープゴートにされるかもしれないという恐怖を抱くようになり、周りの人間が信用できなくなる。

そんなおり、高校の同級生だった鍋島冬香が優一に宛てたUSBを入手する。
冬香は高校卒業後、大学の数学科に進み、新鋭の数学者として香港大学の准教授となっていた。そしてHKプロトコルで暗号を担当していたが、暗号解読キーに関わるミスで会社から命を狙われるようになった。冬香は優一にJプロトコルを潰して欲しいと訴えていた。そして優一に安全な場所に行くまで誰も信じてはならないと忠告した。卒業以来、優一は冬香を1日たりとも忘れたことはなかったのだ。

優一は殺られる前に手を打とうと、危うい手を使ってHKプロトコルに莫大な利益をもたらす。さらに、自分と冬香の身を守るために大胆な行動に出る。

本書は『マクベス』のストーリーが幾度か語られる。
そのあらすじは、マクベスとバンクォーは反乱軍との戦いで勝利を収める。マクベスは夫人と共謀して王を殺害し王位に就くが、精神的な重圧に耐えきれず暴政を行い、バンクォーを暗殺する。夫人は狂って死に、マクベス自身はバンクォーの家臣らの復讐に倒れる。魔女たちが狂言回しの役割をして物語は進み、マクベスは魔女たちの予言に振り回される。
ここで、『マクベス』の登場人物に、本書の登場人物を当てはめてみる。マクベスは中井優一、バンクォーは伴浩輔だろう。魔女は優一に予言めいたことを囁いた娼婦だ。では、マクベス夫人は誰なのか?それは最後の最後に明かされる。→人気ブログランキング

→『マクベス』W・シェイクスピア

『マクベス』ウィリアム・シェイクスピア

1606年にシェイクスピアによって書かれた戯曲。『ハムレット』『オセロー』『リア王』とともに、シェイクスピアの四大悲劇とされる。
マクベスはマクベス夫人と共謀して王を殺害し王位に就くが 、精神的な重圧に耐えきれず暴政を行い、マクベス夫人は狂い死し、マクベスは貴族たちの手によって殺される。狂言回しの役割をする魔女たちの予言にマクベスは一喜一憂する。実在のスコットランド王マクベス(在位1040〜1057年)をモデルにしている。

シェイクスピア全集 (3) マクベス (ちくま文庫)
マクベス
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W. シェイクスピア/松岡和子
ちくま文庫 1996年
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第一幕
反乱軍との戦いで勝利を収めたマクベス将軍とバンクォー将軍が陣営に戻る途中、ふたりは3人の魔女と出会う。マクベスは「いずれは、王になられるお方」、バンクォーは「マクベスより幸せなお方、王を生みはするが、王にはならぬお方」と予言をされる。
その時点でマクベスは魔女たちの言うことを真に受けなかった。そこにスコットランド王ダンカンの使者が現れ、マクベスの武勲を讃え、領地を与えることを告げる。
夫からの手紙を受け取ったマクベス夫人は、ダンカン王の暗殺をマクベスに持ちかけられ、マクベスは王になるという野心が芽生える。
第二幕
マクベスは自分の城にダンカン王を招き暗殺するが、暗殺に使った短剣を持ったまま、夫人の待つ寝室に戻る。マクベスを叱責する夫人は、短剣をダンカン王の死体がある客間に戻しに行く。
マクベス夫妻の両手は血で赤く染まり、マクベスは「もう眠りはない。お前は眠りを殺した」との幻聴を耳にするほど怯えてしまう。マクベス夫人の思惑どおり、マクベスはスコットランド王となる。
第三幕
マクベスは、バンクォーとその息子に暗殺者を差し向け、暗殺者はバンクォーの暗殺には成功するが、息子を取り逃がししてしまう。マクベスはバンクォーの亡霊に悩まされ、マクベス夫人も次第に精神を病んでいく。
第四幕
魔女たちはマクベスにふたつの予言を告げる。「女の股から生まれたものは、マクベスを殺すことはできない」「森が丘に向かってくるまでは、マクベスは決して滅びぬ」
この予言で、マクベスは安堵するが、王冠を抱いたバンクォーの幻影に悩まされる。
第五幕
マクベス夫人は血に染まった手を深夜に洗い続ける夢遊病者となり、やがて狂死する。
マクベスはバンクォーの家臣らが率いるイングランド軍に攻め込まれる。魔女たちの予言を信じて最後まで城に立て籠るが、イングランド軍が木の枝を隠れ蓑にしていたのが森が動いているように見え、マクベスに妻子を殺され仇と命を狙う貴族にマクベスは殺されてしまう。その貴族は帝王切開で生まれたのだった。
マクベスは魔女たちに翻弄され自分の未来を見誤ったのだ。→人気ブログランキング

未必のマクベス』早瀬 耕 ハヤカワ文庫JA 2017年
『蜘蛛巣城』(黒澤明監督、三船敏郎、山田五十鈴、1957年)は『マクベス』が原作である。