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『フランケンシュタイン』メアリー・シェリー

しばしば誤解されるが、フランケンシュタインは「怪物」を生み出したスイス人科学者の名前である。「怪物」には名前が与えられていない。本作は、1813年にイギリスの女性作家メアリー・シェリーが発表したゴシック・スリラー小説である。SF小説の嚆矢とも位置づけられている。

フランケンシュタイン (新潮文庫)
メアリー シェリー
新潮文庫
2014年
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イギリスの北極探検家が姉に宛てた手紙の形をとっている。探検家は、北極海で衰弱したヴィクター・フランケンシュタインを助け、ヴィクターの話を手紙に綴って姉に送る。

ヴィクターはドイツの大学で学び、「理想の人間」を作ろうと、墓を暴き死体をつなぎ合わせて怪物を作り出す。未完成の状態で怪物は実験室を逃げ出す。
怪物はドイツの片田舎で暮らす父子3人の生活を観察し、善意と寛容を学ぼうとする。森で拾った鞄から出てきた『失楽園』『プルターク英雄伝』『若きウェルテルの悩み』を読み、それぞれの感想を述べるくだりは、知性を得て、純粋な心もとうとする怪物の心情が表われている。
風貌はおぞましいほど醜悪で、身体つきは並外れてでかい怪物が、一家に認めてもらおうと姿を現すが、追い払われてしまう。
自分が認められないことに絶望し、ヴィクターに復讐しようと、ヴィクターの弟を絞殺し、その犯人としてフランケンシュタイン家の従順な女中に濡れ衣を着せ処刑に追いこむ。
さらに、ヴィクターの無二の親友を殺し、ヴィクター自身が殺人犯と疑われ牢獄に放り込まれてしまう。
怪物の心境は、揺れ幅が極端なのだ。

孤独な怪物は寂しさを紛らわす伴侶を作ってくれるように、ヴィクターに頼む。ヴィクターは一時は作ろうとしたものの、伴侶が邪悪な心を持つやもしれず、さらに子孫を残すこととなれば邪悪な一族となるやもしれない。そのような約束を請け負ったことを後悔し、約束を反故にする。

やがて、ヴィクターは兼ねてから結婚の約束をしていた最愛の人と結婚するが、新婚旅行の宿に現れた怪物に新妻が殺されてしまう。さらに度重なる不幸に見舞われたヴィクターの父親も、心痛に耐えかねて亡くなってしまう。

愛する人をことごとく失ったヴィクターは、ジュネーブを出て怪物を殺害するために、北へ向かう流浪の旅に出る。そして北極海で遭難し探検家の船に拾われる。
すべてを語り終えた、ヴィクターは船上で息を引き取る。
怪物が船に現れ、自分の創造主であるヴィクターの死をいたく悲しむ。怪物は北極圏に向かい、その後人間界には二度と現れなかったのである。
愛と悲しみと残酷さに満ちた物語である。→人気ブログランキング

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