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2019年3月 2日 (土)

ふくろう女の美容室 テス・ギャラガー

詩人であるテス・ギャラガーはレイモンド・カーヴァーに勧められて小説を書きはじめたという。テスはレイの晩年の10年を共に過ごし、レイが亡くなる2か月前に入籍している。ユーモアとペーソスが入り混じった傑作ぞろいだ。
離婚を経験しレイと死別したテスの実生活を反映して、離婚や死別のバックグランドを抱えた女性が主人公の作品がいくつか見られる。前作『馬を愛した男』に比べると、温和な印象を受ける。
芭蕉の句を自分の墓石に刻もう思うシーンや仏教の教えが出てきたり、良寛の歌が引用されたりして、日本の古典に興味を持っていることがうかがわれる。
巻末には、本書のために訳者が選択した母との対談と父について書いた2編のエッセイが収録されている。
Image_20201113114101ふくろう女の美容室
テス・ギャラガー/橋本博美
新潮社
2008年 ✳︎10

・水恐怖症の女は美容室の隣で洗髪されている男の横顔を見て、胸の高鳴りを覚える「ふくろう女の美容室」。
・製材場の雇い主だった男と従業員だった男は落ちぶれた境遇で出会う。「むかし、そんな奴いた」
・美容室の老猫が始末され、残った猫が客の少女の首に爪をたて傷を残した。「生きものたち」
・離婚した妹から娘の養育を頼まれたが、妹は資産家と再婚し娘を取り戻しに来た。その後、姉が亡くなった。姉の夫は新聞の死亡広告に、遺族として自分の名前と妹の娘の名前を書いた。「石の箱」
・ローマの未亡人からの訴状をもって現れた男に、夫の死を知らせずに、夫の墓の住所を教える。「来る者と去る者」
・38歳の未亡人が護身用の銃を買うかどうか迷う。「マイガン」
・自分でネクタイを結べない隣に住んでいた作家の思い出。カーヴァーをモデルにしたらしい。「ウッドリフさんのネクタイ」
・「キャンプファイヤーに降る雨」は、妻の同僚だった盲目の男が妻を亡くして家に泊まりにくる話。カーヴァーの「大聖堂」で書かれている同じエピソードを書いた。
・スーパーのレジで、突っかかってくる女に、言い返したルビーはふと娘の座右の銘「人はみな、御仏」が思い浮かんだ。夫が釣ってきたニジマスをさばいていて、癇癪女とのやりとりは本気で腹を割ってやりあったのだと、思った。「仏のまなざし」
・夫宛の女からの手紙の束を見つけた妻は、様々なことに対して祈るようになる。「祈る女」
・「聖なる場所」には、園芸愛好家の母とテスの庭仕事をめぐる対話が記載されている。日本語の「庭」の意味は「聖なる場所」だ。
・「父の恋文」では、母への何通もの恋文によって父が徴兵を免れたことが書かれている。

ふくろう女の美容室』テス・ギャラガー/橋本博美 新潮社 2008年
馬を愛した男』テス・ギャラガー/黒田絵美子 中央公論社 1990年

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