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2019年3月13日 (水)

ニックス ネイサン・ヒル

本書はネイサン・ヒルのデビュー作、上下二段組で700余ページというボリューム。
2016年のロサンゼルス・タイムズ文学賞(新人部門)を受賞し、全米批評家協会賞最優秀新人賞の最終候補に残った作品である。メルリ・ストリープ主演でドラマ化が企画されているという。
Photo_20210105083201ニックス
ネイサン ヒル /佐々田雅子
早川書房
2019年

シカゴの北西にある小さな大学で、文学を教えているサミュエル・アンダーソン助教授は、10年前に書いた短編により新人賞を獲って大々的にデビューした。ところが出版社と長編執筆の契約を交わしたにも関わらず、その後作品を書けないでいた。
サミュエルは、できの悪い学生に文学の講義をしつつ、週に40時間以上もオンラインゲームにうつつを抜かしている。

ある日、サミュエルの母親フェイが大統領候補のワイオミング州知事シェルドン・パッカーに石を投げた嫌疑で拘留されていると、弁護士から電話がかかってきた。石を投げたシーンはテレビで繰り返し放送され、フェイは「パッカー・アタッカー」というあだ名までついた有名人になっている。
サミュエルはここ20年間フェイと話したことがない。なぜならフェイはサミュエルが11歳のときに、父親とサミュエルを残して家から姿を消し、その後音信不通となっていた。

サミュエルは同時にいくつかの問題を抱えることになる。
母親の逮捕は解決しなければならない。
サミュエルの生徒ローラ・ポツダムがレポートをコピペしたと、ソフトウェアが判定した。単位はあげられないとするサミュエルに、ローラは諦めない。父親の力を使ってサミュエルを大学から追い出そうとする。
さらに出版社から契約不履行で賠償金を請求されるかもしれないという窮地に立たされる。編集担当者はサミュエルにフェイの伝記を書くようにもちかける。今ならベストセラーになること間違いないと、執筆を迫る。

そこでサミュエルはフェイに会いに行くが、フェイは家を去った理由も、その後の20年間のブランクについても、口を閉ざして何も語ろうとしない。

物語の、時間軸は1968年から2011年まで、場所は母子の生まれ故郷から、シカゴ、ニューヨーク、ノルウェーまで広がっていく。サミュエルの幼い日のフェイとのことや、親友や初恋のこと、フェイの高校時代の事件や大学時代のことが、現在と過去を行きつ戻りつ綴られる。
サミュエルは、父親や介護施設にいる祖父や、フェイが大学時代に同室であったアリスから様々なことを聞き出す。フェイは大学時代に学生運動に関わり逮捕されていた。フェイにとっては身に覚えのない売春の罪で逮捕されたことを知る。

やがて母子は和解し助け合うようになる。しかし、フェイが大学時代に接触があったサイコパスがふたりの前に立ちふさがり、物語はサイコミステリの様相を呈してくる。
本書の主人公はサミュエルとフェイのふたり、家族愛の物語である。

ところでニックスとは、フェイの父親をノルウェーから追ってきた幽霊のこと。フェイはニックスに取り憑かれたと思っていた。→人気ブログランキング

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