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2019年5月23日 (木)

雲上雲下 朝井まかて

中央公論文芸賞を受賞作。
民話を題材としたファンタジー、話の山がいくつもある、大傑作だ。
主人公の草どんは森の奥にある原っぱにいる大きな草だ。草どんの葉にはとんがったギザギザがあるが先端は耳たぶのように丸みを帯びて柔らかい。その草どんに尻尾のちょんぎれた子狐が甘えて昔話をねだる。草どんは、どういうわけか子狐の巧みな誘導に応えてしまう。
草どんと子狐に、山姥が加わって話は進む。
Image_20201206090801雲上雲下(うんじょううんげ)
朝井まかて
徳間書店
2018年

草どんはおなじみの昔話を話す。
爺さんと婆さんが、餅作りをしていて団子が転がって鼠の穴に落ちた。その穴に入ると、伽藍があって天井裏で鬼たちが宴会を開いている。鬼たちがおいていった小判を、眩しいから持っていけと地蔵がいう。
婆さんは隣の意地悪爺婆に顛末を話した。ふたりは小判を手に入れようと団子を作って鼠穴に落とす。

子狐がまたもや果てしな話を催促する。
娘に開けるなといわれた箪笥の引き出しを若い衆が開けてしまう話。田螺の「粒」の出世話。竜宮の乙姫が病気になった話。貧乏寺が隆盛する話。小太郎の話は悲恋だ。
ずば抜けた身体能力をもつ小太郎の親が誰かわからない。小太郎の脇腹には光る鱗があり、水の中を自在に泳ぐことができる。旅籠に売られた初恋の相手を自由の身にして、理不尽な世間を見返してやろうとする。

山姥も子狐も身の上話をはじめるが、途中から草どんがふたりに代わって続きを語る。
山姥は喧嘩で負傷した子狐を助けたのだ。山姥らしからぬ過去が明らかになる。巻末では草どんの出自が明かされる。

母親からあるいは祖母から子どもに昔話が語られる古きよき習慣の衰退を嘆くというのが本書のテーマである。→人気ブログランキング

雲上雲下/朝井まかて/徳間書房/2018年
落陽/朝井まかて/祥伝社文庫/2019年
阿蘭陀西鶴/講談社文庫/2016年
胘(くらら)/新潮社/2016年
恋歌/朝井まかて/講談社文庫/2015年
すかたん/朝井まかて/講談社文庫/2014年

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