『赤い衝動』サンドラ・ブラウン
ニューヨーク・タイムズ ベストセラー リスト第1位を獲得している。
25年前、ダラスのペガサスホテルが爆破され多くの死傷者が出た。フランクリン・トラッパー少佐は瓦礫の中を逃げ惑う生存者を安全な場所に導いた。少佐がひとりの少女を助け出す場面の写真は、世界中の人びとが一度は目にしている。その少女はケーラ・ベイリーだった。
その後、何年ものあいだ、少佐は英雄として祭り上げられ繰り返しマスコミに登場した。
一方、事件で両親を亡くしたケーラは叔父と叔母に引き取られ、マスコミと一切接触することがなかった。
赤い衝動 サンドラ・ブラウン/林 啓恵 集英社文庫 2018年 |
時の人となった少佐と幼かった息子のジョンとの間にわだかまりができた。
そして、ATF(アルコール・タバコ・火器爆発物取締局)の敏腕捜査官になったジョンがATFを辞めたことで、3年まえから少佐とは断絶状態になっている。ジョンは爆発事件には黒幕がいると睨んで独自の捜査を続けたが、それがATFに居づらくなった原因だった。
ローカルテレビ局の人気レポーターとなったケーラは、少佐へのインタヴュ―を取り付けた。少佐へのインタヴューは、事件後25周年のセンセーショナルな番組になるはずだった。少佐の家でのインタヴュー中に、少佐とケーラは強盗に襲撃される。
少佐は銃で撃たれ重傷を負い死線をさまよい、ケーラは窓から脱出してかろうじて助かった。
いったい何が起こったのか? 表向きは決着がついている爆破事件の真相が語られることを恐れた者の犯行だった。
190センチの偉丈夫のジョン・トラッパーはぶっきらぼうで行動は直線的、暴力を振るうことも厭わない。初めはその強引さを嫌っていたケーラだが、襲撃事件と爆破事件の真相を白日のもとに晒すという目的で行動を共にするようになる。やがて、ふたりは官能の世界に浸る関係になる。
ジョンは事件の真相を掌握していた。少佐がテレビに出ることになり、生放送でしかもインタヴューアーがケーラだと知って、黒幕は被害妄想に近い恐れを抱いたのだ。どうやって黒幕を表に引っ張り出しに犯行を認めさせるかだ。
なお、解説によると、原題の“Seeing Red”は「激怒する、かっとなる」という意味で、雄牛が闘牛士の赤いマントを見て暴れ出すことからきた言葉だという。ジョンの性格や激しい性描写を暗示しているのだろう。
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