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『尼子姫十勇士』諸田玲子

毛利氏に敗れ石見銀山を抱える出雲国を追われた尼子氏の勇士たちが集結し、出雲国の奪還をかけて毛利軍と戦う歴史ファンタジー。古事記の逸話を絡めたり、忍者が跋扈する山田風太郎の世界を彷彿とさせたり、大いに楽しませてくれる。

応仁の乱(1467〜1477年)の頃、出雲国の主権を手中にした尼子氏であったが、1566年、毛利軍に滅亡させられる。
その2年後、尼子氏の遺臣である山中鹿介や立原源太兵衛らは、京都興福寺で僧侶となっていた尼子勝久を還俗させ尼子再興軍を募り、毛利氏に立ち向かおうとする。一時はいくつかの城を奪還するが、1578年、上月城を毛利軍に陥落させられ劣勢を強いられる。そして勝久は自害し鹿介は誅殺され、尼子氏は完全に滅亡する。以上が史実であるが、本書の結末はどうなのか。

それぞれの事情を抱える十勇士たちは、尼子勝久を総大将に仰ぎ、大将・山中鹿介と勝久の生みの親・スセリビメのもとに集結し、尼子再建に奮闘することを誓う。

尼子姫十勇士 (毎日新聞出版)
尼子姫十勇士
posted with amazlet at 19.06.14
毎日新聞社
2019年3月 ✳︎9

勇士はさることながら、強烈な個性をもつ女性たちの活躍も見逃せない。
スセリは並みの人物ではなく尼子再興のため黄泉の国から遣わされた女神と思われている。3本脚の八咫烏を守護神とし強烈なカリスマ性が備わってる。その乳姉妹のイナタはスセリの身の回りの世話をする。
鼠の介と夫婦である大柄な猫女は忍びでもあり占いを司る。
女介は勇士として男勝りの活躍をする
毛利の間者・世木忍者のナギは尼子軍を窮地に陥れようとスセリ・勝久の母子に近づく。ナギはスセリの体に入り込み、ナギとスセリが入れ替わるに至り、状況はこんがらがる。
さらに、十勇士のひとりの妹という触れ込みで尼子軍の裏方に紛れこんだ遊女・黄揚羽は、場所をわきまえずに春をひさぐというあっけらかん振りである。はじめは非難の目で見ていたまわりの者は、黄揚羽の天衣無縫さに圧倒されてしまう。やがて黄揚羽の義を貫く筋の通った言動が、まわりの者の共感を得ていく。皆から信頼され賞賛を得る娼婦を登場させたことは大成功だ。

尼子再興軍の戦略は、毛利が九州の大友との合戦の準備に余念がない間に、出雲を手中にしようというものである。
当初は再興軍が毛利の城を陥落させていったものの、本命の月山富田城の奪還には至らなかった。一時は、毛利元就の病が重くなり兵が撤退したが、やがて毛利の圧倒的な兵力に押され、再興軍は奪還した城を奪われていく。そんな劣勢を挽回しようと、スセリは神々のご加護を得んがために、黄泉国に通じる洞穴に入っていく。

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