孤独の意味も、女であることの味わいも 三浦瑠麗
テレビ画面から受ける著者の印象は、弁がたつ冷たそうな女性だった。最近は角が取れてきた印象がある。本書は著者の半生を綴った自伝。読後は著者に対する見方が好意的になってしまう。よくぞここまで赤裸々に自分をさらけ出したものだ。
子供の頃、本をよく読んだという。
テレビはつけない家庭だったから、学校で級友の話題についていけなかったという。
小学生のときにいじめを受けた原因は、転校生にとなった偶然と、人から浮いてしまう個性という必然がないまぜになったものだったと、分析している。
![]() 三浦 瑠麗(Miura Ruri) 新潮社 2019年 |
身に起こった性的な事故を淡々と書き綴っている。抗いがたい結果を受け入れ、最後には流れに身を任せる。それが人生なのだと悟ったという。
学生時代の男性との交際を綴り、その後は温和な夫との出会い、長女の死産を経験し、次女を出産する。
東大農学部を卒業したものの、文科系に目覚め、同大法学政治学の大学院に入り博士号を取得した。
宮沢賢治の『注文多い料理店』からとった「山猫日記」と名付けたブログを始めた。書き始めたら筆が止まらなかったという。生まれたばかりの娘がいて、子育てがてら書き続けた。
このあたりは、チママンダー・ンゴズィ・アディーチェの『アメリカーナ』に登場するナイジェリア出身の主人公が、アルファブロガーとなって活躍するくだりと重なる。
ブログをきっかけに執筆活動を活発に展開し、テレビにも出演するようになる。
女性にとっての永遠の課題は、自分の中に住まう女性性をどう扱うのか、一般的な女性らしさからはみ出した自我にどうやって対処するのかであるという。
女性が自分の意見を発すること、著者が実践していることであるが、それは女性にとって孤独な闘いであるという。→人気ブログランキング
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