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『落花』澤田瞳子

平将門の生き様を、梵唄(ぼんばい)という経の詠み法を極めようとする僧・寛朝の目を通して描く。奈良・平安期の歴史小説の第一人者である著者が、将門を動、寛朝を静の対比で描き上げる。第161回直木賞(2019年7月)候補作。

「平将門の乱」とは、常陸国の平氏一族の抗争から、関東諸国を巻き込む争いへと広がり、将門軍が国府を襲撃し、朝廷に対抗して「新皇」を自称したことにより朝敵となる。しかし即位後わずか2か月たらずで藤原秀頼、平貞盛によって討伐される。
本作では、勝利の宴で惚け者が「新皇に相応しい」と叫んだことで、望んだわけでない将門が「新皇」に祭り上げられてしまう。

落花
落花
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澤田 瞳子
中央公論新社 2019年3月 ✳︎9
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寛朝は父親に疎まれ幼くして仁和寺に預けられた。寛朝の父親・敦実親王は醍醐天皇の同母弟であり、当代一の楽者としてその名を轟かせていた。楽の道では到底父に追いつくことができない寛朝は、経の読誦法である梵唄に活路を見出そうとした。

そして、常盤国の豊原是緒から教えを受けるために、東国に旅立った。下人の千歳は是緒が所持している有明という琵琶の名器を手に入れて、卑賤の身から抜け出そうという企みで従者になった。有明は天下十逸物のひとつとされる。

寛朝一行を迎い入れた武蔵権守・興世王の屋敷に盗賊が押し入って強奪を始めたとき、将門が現れると、盗賊たちは奪った反物を返しはじめた。
将門は伯父との私闘を咎められ京の検非違使庁に出頭して、坂東に戻ってきたところだという。
平将門が面倒を見ている少女のうそは、寛朝の梵唄に聞き惚れて、寛朝が将門の館に来てくれるよう頼むのだった。うその母親と将門は幼馴染、留守中に伯父が営所に火を放ち、うその母親は火傷で亡くなった。
寛朝は将門と己との対比することで、将門の人となりに敬意と憧憬を抱くのだった。

常盤国分寺の僧・心慶に名を変えた豊原是緒は、船で生活し春をひさぐ傀儡女に楽の手ほどきをしている。将門の妹と触れまわる如意と、盲目のあこやたちは心慶に最大限の敬意を払っている。卑しいあこやに有明を授けたという現実に、千歳は衝撃を受ける。有明を手に入れようとなりふり構わない策を弄するのだった。

営所の経営で財をなして領土を富ませる将門と、国府に出仕して勤務する従兄の平貞盛は、いつ戦ってもおかしくない水と油である。
堅物の常陸国司の菅原維幾にひと泡吹かせようと、藤原玄茂(はるもち)と玄明(はるあき)は企んでいる。
玄茂と玄明とあこやの傀儡女船で3日後会おうとしていると、千歳は菅原維幾に知らせた。菅原維幾が玄茂・玄明を襲い、どさくさに紛れて千歳はあこやの琵琶を奪おうと企んだのだ。
将門は玄明・玄茂の暴挙を許すようにとの書状を国府に送るが、国司の藤原維幾はこれを一蹴した。将門の義憤は激しい怒りに変じ、国府に攻め入った。国府に攻め入ったからには、将門は朝廷からすれば叛徒である。
そして、将門軍と藤原秀頼・平貞盛羅の軍の血で血を洗う壮絶な戦いが繰り広げられる。

月人壮士(つきひとおとこ)/中央公論新社/2019年
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