水底の橋 鹿の王 上橋菜穂子
尊厳死につながる議論が展開され、医療の本質に迫ろうとする大胆な試みを貫くファンタジー。
大国・東乎瑠(ツオル)の次期宮廷祭司医長の座をめぐる争いに、オタワル医療の運命がかかっている。進歩派はオタワル医術を受け入れるが、守旧派はオタワル医術の排除を目論んでいる。
オタワルは、国をもたない民である。250年前、黒狼病で王国が滅びたあと、山々に囲まれた地で、土木、建築、ガラス、機械工芸など技術力を伝えてきた。東乎瑠国の妃の難病をオタワルの医術師が完治させたことで、オタワルの医術の優秀さは東乎瑠の貴族たちに頼りにされている。
![]() 上橋 菜穂子 角川書店 2019年 |
しかし、治療に役立つことならなんでも取り入れるオタワル医療と、治療は神聖なものであるべきとする東乎瑠の医療とは、相容れないものがある。
東乎瑠の医療は、例えば、薬は動物由来のものは「穢れ」を理由に忌み嫌う。したがって、オタワル医療で最先端の技術である、輸血や馬の血清を用いる血清療法は、清心教の医療では禁忌である。
清心教の信徒たちは、獣由来の薬を使うことで多少は命が伸びるかもしれないが、穢れた身で生きるよりは、心安らいで草木の薬でいきたいと願う。清心教の司祭医・真那の姪が重い病気にかかっていて、真那の手に負えないのでホッサルに診てほしいとミラルを通じて依頼があった。
ホッサルは、オタワル王国の聖王の末裔で天才的な医術師、ミラルは、ホッサルの恋人で医師でもある。
もし、ホッサルがなにか失態を演ずれば、それを口実にオタワル医師の粛清が推し進められるだろう。あえて火中の栗を拾うべく、ホッサルとミラルは真那の姪の診察に向かった。
ホッサルは、真那から清心教医術の源流とされる秘境・花部に行くように勧められる。
花部への道中、山津波に飲み込まれそうになったとき、ミラルをかばったホッサルは骨折し、奇しくも花部流医術を受けることになる。
ついには、次期宮廷祭司医長の有力候補に毒が盛られる事件が起こり、ストーリーは佳境に入る。→人気ブログランキング
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