« 『ブラック・サンデー』 | トップページ | 『水底の橋 鹿の王』上橋菜穂子 »

『三体』劉 慈錦

文化大革命では、知的な能力をもつ者は辺鄙な土地に送られ、理不尽な生活を強いられた。辛酸を舐めさせられた人物の復讐心が、人類の存亡に関わる事態を招くことになる。壮大なスケールで描く文句なしの大傑作である。

文化大革命の混乱のなか、高名な理論物理学者が年端もいかない紅衛兵から吊るし上げられている場面から始まる。しかも糾弾するのは思想転向させられた自らも物理学者である妻だ。紅衛兵の暴力により物理学者は死亡し、大学生の娘・葉文潔が残された。

2年後、文潔は内モンゴル地区の巨大な森林の建設兵団に入れられ、開墾事業に従事させられていた。そこで殺虫剤が自然を汚染し生態系を破壊することを書いた告発の書、レイチェル・カールソンの『沈黙の春』を読み、文潔は科学技術の進歩に懐疑的な考えを持つようになった。
文潔はレーダー峰の紅岸プロジェクトに加わる。プロジェクトの目的は地球外知的生命との交信であった。


三体
三体

posted with amazlet at 19.09.02
劉 慈欣
/大森望・吉光さくら・ワン・チャイ 訳
立原透耶 監修
早川書房 2019年7月 ✳︎10
売り上げランキング: 76

場面は40年後の現代に飛ぶ。もうひとりの主人公、ナノマテリアル開発者 の汪淼(おう・ぴょう)が参加した会議には、アメリカとイギリスの軍人とCIAのふたりも混じっていた。リストにある物理科学者たちはこの2ヶ月のうちに立て続けに自殺している。
敵の企みの根底にあるのは、〈科学技術革命は人類社会の一種の病変であり、技術の爆発的発達は癌細胞の急速な拡散と同じく、宿主の体の栄養を枯渇させ臓器を蝕み、ついには宿主を死亡させる〉。つまり科学技術の発展を阻止することが敵の目的なのだ。

汪淼は『三体』のコンピュータ・ゲームに、Vスーツを着て没頭するようになる。そのゲームの舞台は三つの太陽がある三体世界で、文明は滅亡と復興を繰り返す。このゲームは三体協会がプロデュースしたものだった。

汪淼は事の真相を探るべく、癌に侵された葉文潔に会いに行く。
40年前に紅岸プロジェクトに従事していた文潔は三体世界の存在を知り、滅亡と復興を繰り返す文明と、他の恒星系に移住しようとする彼らの計画について知った。文潔は上層部に極秘で、「私たちの文明は、もう自分で自分の問題を解決できない、だからあなたたちの力に介入してもらう必要がある」と送信したのだ。
文潔がプロジェクトに従事している間に、4光年離れた恒星からの返信はなかった。

文潔は父親を殺した紅衛兵に会うことで、宇宙の彼方からより高度な文明を、人類世界に招き入れることに揺るぎない自信をもった。そして文潔は地球三体運動の総司令官を引き受けた。
文潔の考えに心酔したエヴァンスは、父親の膨大な遺産を相続し、紅岸基地と同クラスの高度な通信機器を備えたタンカー船を造った。ところが傍受した三体世界からのメッセージを極秘にして暴走しだすのだった。

« 『ブラック・サンデー』 | トップページ | 『水底の橋 鹿の王』上橋菜穂子 »

ミステリ」カテゴリの記事

SF」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『ブラック・サンデー』 | トップページ | 『水底の橋 鹿の王』上橋菜穂子 »