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『ケトン食ががんを消す』古川健司

極端な糖質制限による、がん細胞の「兵糧攻め」がケトン食である。
がん細胞が栄養源としているのは、主にブドウ糖(グルコース)である。それも、正常細胞よりも3〜8倍ものブドウ糖を取り入れなければならない。
一方、正常細胞は、ブドウ糖の供給が途絶えても、緊急用のエネルギーを皮下脂肪からのケトン体でまかなうことができる。
著者は、がんに対する食による治療が長年軽視されてきたと力説する。


ケトン食ががんを消す (光文社新書)

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がん細胞のエネルギー産生は、細胞質内に酸素がない状態で糖を分解し乳酸を放出する効率の悪い「嫌気性解糖」が行われている。このエネルギー産生経路では、ブドウ糖1分子あたり2分子のATPを作るだけ(正常細胞が1分子のブドウ糖で36分子のATPを作る) 。がん細胞は十分な酸素存在下でも、嫌気的な糖利用を行う。

がん細胞にはケトン体をエネルギーに変える酵素がない。がん患者の糖質摂取量を極端に少なくすることで、がん細胞の分裂が抑制され、がんを縮小、場合によっては死滅させることも可能になる。

ケトン体のアセト酢酸とβ-ヒドロキシン酪酸の増加で、血液や体液の濃度が酸性になった場合をケトアシドーシスという。糖質制限で、医師たちが懸念するのはこのケトアシドーシスである。これは1型糖尿病に多くみられ、嘔吐や頭痛、頻脈、意識障害や昏睡を引き起こす。
インシュリンが正常である限り、ケトン体がいくら増えてもケトアシドーシスには陥らない。

胎児はケトン体で生きている。胎児のケトン体量は1600μmol/L以上ある。がんの細胞分裂のスピードは、胎児の細胞分裂のそれに匹敵するといわれる。たとえ胎児の遺伝子にコピーミスがあっても、ケトン体と低血糖ががん化を抑制していると考えられる。ケトン体1600μmol/L以上が、がん細胞が正常細胞へリセットされる目安になるにではないか。
総ケトン体指数が一定以上の数値まで上昇すると、なんらかのがん抑制遺伝子のスイッチ入り、がんが縮小するのではないかと著者は考える。

「免疫栄養ケトン食」によるがん治療は、ケトン食+EPA(エイコサペンタエン酸)+タンパク質の組み合わせである。
【セミケトジェニック免疫栄養療法 】糖質摂取量80g以下(主食は通常食の1/3、野菜などから糖質を摂るほうが望ましい):がん予防、がん再発予防の食事療法で、がん治療ではない。
【ケトジェニック免疫栄養療法】40g以下:がん治療の維持療法である。
【スーパーケトジェニック免疫栄養療法】20g 以下(95%カット)が治療食である。

「膵癌の末期患者に著効したスタチン製剤と牛蒡子(ごぼうし・牛蒡の種)」
ケトン体をエネルギー源にするがん細胞も現れる。コレステロール血症の治療薬であるスタチン製剤には、糖質耐性を持ったがん細胞が乳酸やケトン体を栄養にすることをブロックする働きがある。
牛蒡子に含まれるアルクチゲニンには、膵臓癌に対し強い抗腫瘍性の作用があることが、国立がんセンターの研究によって明らかにされているという。
TS-1の治療を受けるも、余命1ヶ月の宣告を受けた膵癌の末期患者に、スタチン製剤を処方し、サプリメントとして牛蒡子を摂取するよう勧めたところ、腹水が消え著効を示したという。

ビタミンDとケトン食 最強のがん治療/古川健司/光文社新書/2019年
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がん光免疫治療の登場/永山悦子 小林久隆(協力) /青灯社/2017年
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ケトン食ががんを消す/古川健司/光文社新書/2016年
がん‐4000年の歴史-上下/シッダールタ・ムカジー/早川NF文庫/2016年
がん幹細胞の謎にせまる/山崎裕人/ちくま新書/2015年

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