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『がん検診は、線虫のしごと 精度は9割「生物診断」が命を救う』広津崇亮

線虫によるがん検査が2020年1月から実用化される。線虫にはカイチュウやギョウチュウやアニサキスが含まれ、地球上に1億種いるという。検査に使われる線虫は体長がたった1mmのシー・エレガンス(C.elegans)である。シー・エレガンスは雌雄同体で、生まれてくるのはクローンだから遺伝的な個体差がなく、凍結保存しておくと10年先20年先でも生き返る。


がん検診は、線虫のしごと 精度は9割「生物診断」が命を救う (光文社新書)

広津崇亮(Hirotsu Takaaki
光文社新書 ✳10
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シャーレに健常者の尿をたらすとシー・エレガンスは尿を避けるが、がん患者の尿には寄っていく。ほぼ全身のがんを調べることができる。ステージ0〜1の早期がんも、9割の確率で検知できるという驚異の精度である。しかも尿1滴で検査が可能である。

著者は20年間に及ぶ線虫研究から、線虫にがんの分泌物質を嗅ぎ分ける能力があることを発見した。犬にがんの匂いを嗅ぎ分けられるなら線虫にも嗅ぎ分けられるはずだと思ったことがきっかけだという。
2015年、九州大学の助教だった著者は、線虫がん検査「N-NOSE」を実用化するため、大学を辞めベンチャー企業の実業家に転身した。

従来のがん検診は、時間がかかる、苦痛を伴う、場合によっては危険を伴うこともある、ニ次スクリーニング検査や精密検査しかなかった。心身の負担が大きく、自覚症状のない段階で受ける気にはなれないような検査だ。

「N-NOSE」は、「簡便・高精度・安価・早期発見が可能・苦痛がない・全身網羅的」という一次がん検診の理想的な条件を備えもつ。検査率が低迷する日本のがん検診に、風穴をあける画期的な検査法である。

著者の目は日本だけに向けられているわけではない。実用化の7年後の2027年には日本国内6000万人、東アジアと東南アジアで2億人、インドで1億人、北米で1億5千万人、合計8億1千万人に、「N-NOSE」が普及することを目指している。さらに、がん以外の疾病の早期発見の可能性を追求している。

線虫がん検査の開発にまつわる話だけでなく、起業してからの経緯にも惹きつけられる。起業を目指す若い人たちに示唆に富むアドバイスが書かれている。進取の気性をもつ著者の力強いエネルギーが感じられる。

がん検診は、線虫のしごと 精度は9割「生物診断」が命を救う/広津崇亮/光文社新書/2019年
ビタミンDとケトン食 最強のがん治療/古川健司/光文社新書/2019年
がん免疫療法とはなにか/本庶 佑/岩波新書/2019年
がん光免疫治療の登場/永山悦子 小林久隆(協力) /青灯社/2017年
がん治療革命の衝撃 プレシジョン・メディシンとは何か/NHKスペシャル取材班/NHK出版新書/2017年
ケトン食ががんを消す/古川健司/光文社新書/2016年
がん‐4000年の歴史-上下/シッダールタ・ムカジー/早川NF文庫/2016年
がん幹細胞の謎にせまる/山崎裕人/ちくま新書/2015年

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