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『インディアンとカジノ アメリカの光と影』野口久美子

本書のキーワードは「国家の良心」である。アメリカが、アメリカ全土を所有していたインディアンとの約束(契約)を、どう履行しようとしてきたかである。

インディアンとカジノ (ちくま新書)
野口 久美子(Noguchi Kumiko
ちくま新書
2019年11月 ✳︎10

1990年代以降、カジノを建設するインディアン部族が急増した。現在240の部族が、500以上のインディアン・カジノを経営しており、およそ20年で総収益がアメリカの商業カジノの収益を上回った。インディアン・カジノは、保留地内では州の税制や法制度の適用が制限されるという経済活動上のメリットを生かした、保留地ビジネスである。
インディアン・カジノ時代は、部族がその当然の権利を行使することによって出現した、インデアン史の新しい時代であるという。真に見えてくるのは、それまでに解決されてこなかった、インディアンの圧倒的な貧困であるという。

アメリカはインディアン部族という主権国家群の土地の上に建国された国である。アメリカには、個々の部族を一つの主権国家と承認したうえで、部族から土地の譲渡を受け、その見返りに部族自治を保護するという約束がある。この方針を、インディアン史の権威ウィルコム・ウォッシュバーンは、「国家の良心」と呼んだ。

アメリカ憲法では、部族は国内依存国家という固有の政治的地位を持ち、部族に州法は適応されないこと、連邦政府が部族の政治的地位を保護する責任があることの3点が明確になった。しかし、現実は保留地に閉じ込めただけで、十分な補償は望むべくもなかったのが実情である。

国家を頼りにすることを諦めたインディアンが、貧困から抜け出そうとして考え出されたのが、タバコ産業であり、その次がビンゴ、そしてカジノである。
1977年、フロリダ南部のセミノール部族の保留地にビンゴ場の建設が予定された。1979年、ビンゴ場は予定通りにオープンした。大盛況で6ヵ月で融資を返済する大成功のビジネスとなった。
1980年、カリフォルニア州南部の部族カバゾンが、保留地内にカジノを開いた。州はカバゾン・カジノに営業停止を命じた。しかし最終的にアメリカ最高裁判所に持ち込まれ、1987年、「保留地における部族カジノは州に規制されない経済行為である」との判決が下った。
カバゾン判決以後、カジノ産業に乗り出す部族が急増した。部族は経済的自活の手段を獲得したのである。
1988年、レーガン大統領によって、「インディアン・ゲーミング規制法(カジノ法)」制定された。同法は、インディアン・カジノ産業に連邦と州がどこまで介入できるのか、どこからが介入できないかという点を明確化した。これが「アメリカ(国家)の良心」の今日的な姿であるという。

インディアン・カジノは、連邦政府の責任回避の結果である。アメリカは建国期から部族自治を尊重し、保留地を保護する責任を負ってきたはずである。この「良心」は過去200年以上もの間、司法、行政、立法の指針とされながらも、その元来の意味は有名無実化されてきた。そして、強制移住政策行われ、抵抗する部族を虐殺し、そして保留地政策が行われた。アメリカが保護責任を放棄してきた結果が、インディアン部族に圧倒的な貧困をもたらしたのは間違いないとする。

インディアンとカジノ アメリカの光と影/野口久美子/ちくま新書/2019年
インディアンの夢のあと:北米大陸に神話と遺跡を訪ねて/徳田いつこ/平凡社新書/2000年

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