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『世界の危険思想』丸山ゴンザレス

著者は、日本や海外の裏社会やスラムや治安が悪いとされる場所で取材をしてきた。そこで出会った悪い人たちの頭の中がどうなっているのか。危険な考え方の根幹の理解に近づくことが本書の目的であるという。強面の著者は、危険な地区でよく現地の人間に間違われるという。取材には好都合だったろう。

世界の危険思想 悪いやつらの頭の中 (光文社新書)
丸山 ゴンザレス
光文社新書
2019年5月 ✳︎8
売り上げランキング: 16,504

ジャマイカで殺し屋に会う。恥をかかされた女を殺して欲しいという依頼が、クライアントから電話で入る。殺し屋はその日暮らしに困るような貧乏人だった。

次に、フィリピンの邦人殺害事件に触れる。
犯人像は、警察を味方にすることができる、わずがな報酬で殺人を請け負う、刑務所に入ることも厭わないような人物であるという。フィリピンでは、交通事故で重症を負わせて治療費を請求されるより、殺す方を選ぶという。

ケニアの窃盗団の話。窃盗団は一人を除いてすべて警察に射殺された。警察の言い分は、取り調べにはひとりいれば十分。殺してしまえば調書は取らなくて済む。残業するくらいなら殺してしまうという発想である。

著者のスラムの定義は、「貧しい人たちや、問題のある人たちが密集して住んでいるエリア」。スラムには普通の人々の暮らしがある。スラムでは富を再分配しなければ、周りから襲撃されることもある。スラム社会と裏社会を同一視する人が多いが、別である。
裏社会のルールは、縄張り、ボスへの忠誠、アンチ警察である。「その通りを越えたら殺されても文句を言えない」という縄張り意識がある。忠誠心を植え付けるには、通過儀礼として、殺人の手伝いやとどめを刺させたりする。

ドラッグの最大消費地はアメリカと中国。
MDMA(エクスタシー)やコカイン、LSDはパーティドラッグとしてノリやテンションをあげるために使われることが多い。これらは線引きのこちら側にあるドラッグ。
線引きの向こう側にあるドラッグは、ヘロインとメス(覚せい剤)でるという。
向こう側に行った人たちの頭の中はやられているので、聞いても無駄であるとする。

フィリピンのドゥテルテ大統領は、麻薬中毒者、売人を逮捕し、抵抗する者の射殺を許可した。国民は大統領を支持した。ところが、麻薬ビジネスに関係していない、警察にとって都合の悪い人間も射殺されるようになり、警察に殺されるくらいなら監獄の方がマシだと、監獄が人で溢れかえっているという。

ボリビアではコカの葉は嗜好品として合法である。精製すれば麻薬になって違法になる。ボリビアでは平均月収が3万円程度、運び屋は1回30万円、捕まれば8年の刑。
運び屋は運転免許があれば誰でもできる。ところがつかまりやすい。捕まっても簡単に替えがきく。

相手を甘いと思ってナメることが、人類の持つ感情の中で最も恐ろしい危険思想だというのが著者の考え。危険思想の持ち主は、際限なく自分の感情を押し付ける権利を持っていると錯覚してしまう。相手に対する敬意のなさが原因であるとする。

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