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2020年1月

『流星ひとつ』沢木耕太郎

1979年末、藤圭子は28歳で引退した。デビューから10年目だった。著者は、引退の数ヶ月前、ホテル・ニューオータニのバーで藤圭子にインタヴューした。
藤圭子はウォッカ・トニックを注文する。著者も同じものを注文する。
本書は、説明文なしト書きなしで、会話だけで構成されている。会話が行き詰まったり、会話に熱を帯びたりしているところが生々しく伝わってくる。


流星ひとつ (新潮文庫)

流星ひとつ
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沢木 耕太郎
文春文庫 2016年 ✳︎10
売り上げランキング: 13,770

藤圭子が肩の力を抜いて実にのびのびと本音で話している。インタヴュアーとしての著者の力量が引き出した素晴らしいインタヴューだ。藤圭子が素朴で潔癖で、正義感が強い真っ直ぐな人だということがわかる。

冒頭、藤圭子は心を開かない。週刊誌やテレビのインタヴューは嫌いだという。なぜなら、見出しも結論も決まっている、言わないことも書くからだという。

5年前、声が出なくなって声帯の手術を受けた。無知で手術をしてしまったという。
子どもの頃からがらがら声で、よく風邪引いているのかと言われた。歌手になってから、声が出ないことがあり、休むことで解決していた。
手術をして高音がすっきり出るようになったが、声が引っかからなくなった。

声が引っかからなくなったことについて、藤圭子は次のように言う。
〈あたしの声が、聞く人の心のどこかに引っかからなくなってしまったことなの。声があたしの喉に引っ掛らなくなったら、人の心にもひっかからなくなってしまった。…なんてね。でも、ほんとだよ。歌っていうのは、聞いている人に、あれっ、と思わせなくちゃいけないんだ。あれっ、と思わせ、もう一度、と思ってもらわなくては駄目なんだよ。だけどあたしの歌に、それがなくなってしまった。〉
手術してからの5年間は歌うのが辛かったという。
やめてどうするのという問いに勉強したいと答えた。

巻末の「後記」に本書の出版の経緯が書かれている。
著者は、アメリカで暮らす藤圭子に原稿を送り出版の許可を得た。しかし出版しなかった。理由は、もし藤圭子がカンバックしたときに、本書に書かれている内容により人間関係に支障が生じる可能性があると考えたからだ。

アメリカに渡った藤圭子は、宇多田照實氏と結婚して娘を生んだ。日本とアメリカを行き来する生活を送り、娘には音楽の英才教育を受けさせた。
1998年に、娘が15歳で宇多田ヒカルとしてデビューし、世界的な「時代の歌姫」となった。
それを機に、本書を出版してもいい時がきたのではないかと藤圭子に連絡を取ったが、連絡がつかず出版を諦めていた。
そして、2013年8月22日、藤圭子がマンションの13階から飛び降り自殺をした。
同年10月に本作品は単行本として出版された。

『機功のイブ』乾 緑郎

大傑作だ。奇想の展開にページをめくる手が止まらない。
天府(江戸を想定した大都市)を舞台に、「機功人形(オートマタ)」、いまで言えばヒト型汎用AI、かつては「アンドロイド」と呼ばれる人間と見紛うロボットが登場する。タイムトラベルものではない斬新な設定である。しかも、物語の背景には公儀と女系によって継承される天帝家(朝廷)の覇権争いがあり、大きいスケールで描かれている。


機巧のイヴ(新潮文庫)

機巧のイヴ
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乾 緑郎
新潮文庫
2017年 ✳︎10
売り上げランキング: 68,205

幕府精錬方手伝という得体の知れない役職に就く釘宮久蔵は、60歳がらみの天才機巧師(ロボット制作者)である。久蔵が作った人間と区別がつかないくらい精巧な機巧人形の伊武(イヴ)と、天府の郊外に暮らしている。

5話が連作短編のかたちなしていて、巨大遊郭に君臨する遊女・羽鳥を描いた第1話「機巧のイヴ」には、公儀が催す闘蟋会(蟋蟀同士を戦わせる競技)に、無類の強さを誇る闘蟋が持ち込まれる。それは機巧化された蟋蟀だった。機巧化された蟋蟀は後半につながる伏線である。
第2話「箱の中のヘラクレス」は、有望な若手の相撲取り・天徳鯨右衛門を描いた。第1話と2話は、独立した短編としても優れた出来栄えである。

公儀隠密・田坂甚内が釘宮久蔵への巨額の金の流れを調べていると、天帝家とのつながりが見えてきた。(第3話)。
第4話では、舞台が上方(京都を想定している)の朝廷に移り、女帝に仕える隠密・春日が登場する。

甚内にとって謎は深まるばかりだ。
精錬方手伝・釘宮久蔵とその居宅に住む伊武はいったい何者なのか。幕府転覆を狙った比嘉恵庵事件と「機巧人形」つながりは何か。久蔵の機巧の師匠は恵庵だった。さらに天帝家に伝わる「神代の神器」とは何か。
そして、最終章ではロボットに魂があるかないかが語られる。

ねなしぐさ平賀源内の殺人/宝島社/2020年
機功のイブ 帝都浪漫篇/新潮文庫/2020年
機巧のイヴ 新世界覚醒篇/新潮文庫/2018年
悪党町奴夢散際/幻冬社時代/小説文庫/2018年
機巧のイブ/新潮文庫/2017年
塞の巫女 甲州忍び秘伝/朝日文庫/2014年

『変見自在 習近平と朝日、どちらが本当の反日か』高山正之

『週刊新潮』の辛口コラム「変見自在」(2014年6月〜2015年6月)の文庫化。
産経新聞OBである著者は朝日新聞を目の敵にする。
「朝日にあらずんば新聞にあらず」と思い上がっていた朝日新聞は、批判されても仕方がないことをやってきた。
朝日新聞は、昭和30年代半ば北朝鮮は地上の楽園と報じ続け、日本在住の朝鮮人20万人が地獄の北朝鮮に帰った。
中国での煙幕を毒ガスだと報道したり、サンゴに落書きして「日本人KYがやった」と書いたり、挙句は韓国人義母の入れ知恵で植村隆が従軍慰安婦の嘘をでっち上げた。

変見自在 習近平と朝日、どちらが本当の反日か (新潮文庫)
〓山 正之
新潮社 (2019-08-28)
売り上げランキング: 55,868

収録されているコラムのひとつ「キリスト教徒を締め出した日本の叡智」の要旨は次のようだ。
〈16世紀、キリスト教が日本にやってきた。日本には八百万の神がいるから、一人増えても日本人は気にしなかった。ところが、キリシタン大名高山右近は城下の神社仏閣を壊していった。彼らは信徒以外は人間扱いしなかった。キリシタン大名は硝石1樽を女50人と引き換え、イエズス会はその女たちを奴隷に売って大金を稼いだ。
秀吉は宣教師に神社仏閣と仲良くするように、奴隷売買をやめるように説得した。10年待ったが、改めなかったので26人の教徒を処刑した。
徳川幕府もこの狭量の宗教を諌めた。道を外れた民には踏み絵を踏むだけで許した。異教徒を皆殺しにするキリスト教では考えられない寛容さだ。
しかし懲りないキリスト教は「島原の乱」を起こす。この経緯を踏まえ、日本はキリスト教を邪教として禁じた。ローマ帝国すらできなかった世界で初めてのことを日本はやった。
おかげで、日本は宗教戦争に巻き込まれることがなかった。明治憲法発布まで邪教への入信を戒めた。〉
著者は、キリスト教排除は先人の叡智であるとする。キリスト教が世界中でひき起こした凄惨な歴史を見るにつけ、一神教のもつ危うさに気づかされる。秀吉や徳川幕府のとったキリスト教排除は「日本を救った叡智」と評価されていい。

本書では解説にも注目したい。
担当するのは産経新聞の著者の後輩である福島香織である。それまで、『変見自在』の文庫版の解説は、保守の言論界を代表する評論家や作家が担当してきた。彼女が選ばれたのは、著者に目をかけられ、著者を「高山先輩」と呼んで尊敬し、自身も保守系のスタンスをとる気骨ある書き手であるからだろう。

変見自在 習近平と朝日、どちらが本当の反日か/新潮文庫/2019年
変見自在 オバマ大統領は黒人か/新潮文庫/2015年

『マンハッタン・ビーチ』ジェニファー・イーガン

連作短篇『ならずものがやってくる』で、ピューリッツァー賞(2011年)を受賞したジェニファー・イーガンの作品。舞台は第二次大戦下のニューヨーク。差別に果敢に立ち向かい女性潜水士を目指すアナの物語。

12月末、11歳のアナ・ケリガンが父親のエディに連れられて、高級住宅地マンハッタン・ビーチにあるデクスター・スタイルズの屋敷を訪れるところから、物語は始まる。エディは裏金を受け渡しする運び屋をやっていたが、アナは父の仕事の内容を知らない。


マンハッタン・ビーチ

マンハッタン・ビーチ
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ジェニファー・イーガン/中谷友紀子
早川書房 2019年 ✳︎10
売り上げランキング: 216,883

1942年、太平洋戦時下、母と重い障害の妹とともにアパートで暮らす19歳のアナは、ブルックリンの海軍工廠で働いていた。
5年前に、なんの前触れもなくなんの痕跡も残さず、父が失踪した。

友達と訪れたナイトクラブで、アナはデクスターに出う。アナはかつてデクスターの屋敷を父親とともに訪れたことを思い出した。デクスターが父親の消息を知っていると確信し、それを確かめるためにデクスターに近づこうとする。

アナは子どもころから意志が強く、寒さにも強かった。海が大好きで、海の底を歩いてみたいと思っていた。
潜水夫の仕事に興味があるとアナは大尉に相談したが、相手にされなかった。潜水夫への憧れはアナの中でどんどん膨らんでいく。潜水具は総重量が90キロもある。女子トイレはなく、更衣室は物置だ。男しかいない世界はセクハラとパワハラが待ち受けていた。

潜水夫の道を選んだアナの奮闘、WAPSの銀行家の令嬢と結婚したデクスターのイタリア・マフィアとしての生活、マフィアの下っ端として働くエディの失踪後の生き様、この3人を軸に物語は進んでいく。

戦時中の耐久生活を強いられるなか、アナは女性であるハンディキャップと思わぬアクシデントを、持ち前の意志の強さと人を惹きつける人間的な魅力を武器に、果敢に乗り越えていく。
怒涛の展開にぐいぐい引き込まれてしまう。大傑作だ。

ならずものがやってくる』 ハヤカワepi文庫 2015年
マンハッタン・ビーチ』早川書房 2019年

『妖説忠臣蔵』山田風太郎

妖説は造語であるが、なんとなく意味が伝わる。妖には謎となまめかしさの合わさったニュアンスがあり、妖説は妖しいスピンオフという意味である。山田風太郎は歴史からモチーフを取り出して見事なスピンオフに仕立て上げる天賦の才をもっている。本書は、その才能がいかんなく発揮された短編集である。


妖説忠臣蔵 (集英社文庫)

妖説忠臣蔵
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集英社文庫 (2014-08-01) ✳︎10
売り上げランキング: 305,733

「赤穂飛脚」
海つばめのお銀は、妹が吉良上野介に差し出される前に、京の置屋から妹を身請けする金を手に入れるために、吉良邸に忍び込み小判を盗み出した。吉良の家臣・清水一学に追跡され、赤穂藩の萱野三平がかくまってくれて難を逃れた。お銀は一学に心惹かれた。

その頃、殿中松の廊下で浅野内匠頭が上野介を斬りつけた。
赤穂藩江戸屋敷から刀傷沙汰を伝える書状が早飛脚に託された。一方、赤穂藩の悪徳江戸家老は、藩が取りつぶしになる前に藩の金を持って逃げるようにと家臣への書状を悪党に託した。
萱野三平は一大事を赤穂藩に知らせるため、清水一学はそうはさせじと、悪党どもは萱野より早く悪家老の書状を届けるため、赤穂に向かう。一方、お銀は妹を身請けしに京に向かい、四者は箱根の関所の前で大井川で上野介の地元の岡崎で、出くわす。

「殺人蔵」
銃で弾を放った男に手裏剣で傷を負わせ、その男をつけていくと、とある家で追跡ができなくなった。狙われた駕籠の老人の警護していた3人の男を、別の日に、吉原で見かけ後をつけた。3人の隣の部屋に部屋をとった。灰方、井口、大久保のうち裏切り者がいると、かつて銃で狙われた老人が言う。灰方が殺された。井口は腕をけがしている。つぎに大久保が殺られた。犯人は?そして語り手は?

「蟲臣蔵」
塩谷半平は大望を前に犬を斬って捕吏に追われる身となって切腹した。
半平の妹・お縫は田中貞四郎の許嫁である。討ち入りあとは切腹が待っている。お縫の父親が身体を壊して医者に診せる金がいる。貞四郎は京の色町で遊び呆ける内蔵助から金を借りると京に向かった。貞四郎が帰るとお縫は身を売っていた。
仇討ち急進派でありながら酒と女に溺れ脱落した貞四郎を描く。

「俺も四十七士」
南八丁堀に5人の男が住みこんだ。3人は武士で、他に医者と下男の喜十郎。
大坂から喜十郎の妻が江戸にやって来て、喜十郎の勤め先を見つけてきたという。ふたりが訪れたのは、上杉藩の江戸屋敷。上杉藩の藩主は吉良上野介の息子・綱憲である。喜十郎が気づいたときには、遅かった。妻は斬られ死んだが、喜十郎はほうほうの体で逃げ帰った。
そして、松平隠岐守に預けられた10名はいよいよ切腹の時が迫っていた。そのなかにまったく目立つことのなかった千馬三郎兵衛こと喜十郎がいた。

「生きている上野介」
討ち入りから2年半の夏、上野介が生きているという噂が立った。吉良以上に世間から蔑まれたのは討ち入りを回避した奥野将監である。四十七士は誰も上野介の顔を知らなかった。上野介らしき人物は上杉藩の江戸屋敷にいるという。内蔵介は信頼をおく奥野を、上野介が生き残ったときの二番隊として残したというが。。

妖説忠臣蔵/集英社文庫/2014年
伊賀忍法帖/山田風太郎/講談社文庫/1999年
くノ一忍法帖/山田風太郎/講談社文庫/1999年

『さいはての中国』安田峰俊

著者は中国国内外の中国らしいあるいは中国的な毒を含んだ場所で取材を行った。
アメリカに対抗する大国になりつつある中国は、王朝時代のDNAを引き継いだ国家主席が君臨している。外交では、アジア・アフリカの小国にインフラを整備する代わりに、金でがんじがらめにしている。著者の現地取材は右派雑誌『SAPIO』の企画で行われた。


さいはての中国 (小学館新書)

さいはての中国
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安田 峰俊(Yasuda Minetoshi
小学館新書 2018年
売り上げランキング: 6,989

中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深圳。ここにはネトゲ廃人たちがネットカフェで生活する。ネトゲ廃人たちは、土木・建築系の工事現場、スマホやタブレットPCを製造するデジタル工場がで働き、稼いだ金はネトゲやスマホのアプリ課金、オンラインカジノといったサイバーな娯楽につぎ込んでいる。

アフリカ系外国人たちが住む広州市。公的に確認されているだけで2万人、不法滞在者を含めると10万から30万人いるという。親アフリカ政策を取ってきた中国に、アフリカ諸国の人々は好意的な考えを持っている。
ショッピングモールの中国人ガードマンが言う。「連中は声が大きくて態度が傲慢だ。文化的な水準も低い。自国のルールだけで生きている。中国の文化を尊重しないんだ」。中国人が感じるアフリカの人々は、日本人が感じる中国人そのままだ。

習近平政権の特徴は、習近平やその一族と個人的な縁があったり、習近平に露骨にすり寄ってくる人間に厚遇を与えることだ。習近平は自分の仲間以外に対しては恐ろしく冷淡だ。習近平は王朝時代のDNAを引き継ごうとしている。
上海は江沢民がテコ入れした。深圳は鄧小平の肝入り。前任の為政者たちを上回る権威を身に付けたい習近平は、上海や深圳と同格の経済都市を自分の手で作りたいと考えている。新首都候補の雄安新区開発は「国家、千年の大計」とされている。

国家主席が変われば、政策が変わり、法律で投資が凍結される。それまで建設ラッシュの都市が、瞬く間にゴーストタウンになる。そんな内モンゴルの都市オルドスは、鬼城(ダイチェン)と呼ばれる。

カンボジアはポルポト時代に社会が破壊されてしまい、知識人の数が少ない。国税局員なのに帳簿をつけていない。政治家なのに政策立案の方法をしたない。だからこそ日本が発揮できる役割がある。
日本は無償資金協力であるが、中国は有償。カンボジア政府に援助の形をとりつつ、ツケ払いで巨額のハード・インフラを売りつけている。国民は中国を嫌っているが、政府が勝手に彼らを誘致する。中国からの有償資金は高官の懐に入る。
フンセン国王は野党カンボジア救国党の党首を反逆罪で逮捕し、救国党を解散させた。野党不在のままで総選挙が行われ、フンセンの党であるカンボジア人民党が全議席を獲得した。1993年にUNTACが作った議会制民主主義の枠組みがなくなってしまった。欧米諸国が手を引いた総選挙で、選挙を管理したのはまともな選挙が行われれいない中国である。

カナダの中華系住民は多い。人口3515万に177万人がいる。中華系活動家により、トロント州の高校の教科書に南京問題が掲載されるようになった。カナダから日本批判の狼煙を上げている。

『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーバー

校門を出た11歳のポリーを待っていたのは、刑務所を出所したばかりの父親ネイトであった。
ポリーは現実を逃避している。ぬいぐるみの熊を抱え、自分は金星から来たとうそぶく。熊は片目がとれ汚れてみすぼらしくなっているが、ポリーの心のよりどころだ。ポリーは熊を生きているように扱う。


拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)

拳銃使いの娘
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ジョーダン・ハーパー/鈴木恵
早川書房
2019年 ✳︎9
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ネイトの兄ニックは総合格闘技を身につけていた。ニックは酒場の喧嘩で相手を殴り殺して刑務所に入った。出所してから、〈アーリアン・スティール〉の用心棒におさまった。数年前、盗んだバイクで逃走中、警察に追跡されフリーウェイで激突死した。ネイトは敬愛するニックから男としての生き様を学んだ。

ネイトはニックのお陰で安全な監獄生活を送った。ところが、出所間近になって、〈アーリアン・スティール〉のボスであるクレージー・クレイグの弟を、物の弾みで殺してしまった。クレイブはネイトの暗殺指令を出した。命令はカリフォルニアの闇の社会に、瞬く間に広がった。指令書にはネイトと元妻と娘をナイフで殺し塩を巻くこと、と書かれていた
ネイトが出所したその日に、元妻と新しい夫はナイフで殺された。

ネイトは自分とポリーはどこへ行っても安全でないことを悟った。ならば、ポリーを守るためにこちらから攻めるしかないと決意した。ネイトの作戦は、殺害命令が撤回されるまで、〈アーリアン・スティール〉から麻薬や金を盗むというもの。
ふたりは銀行強盗をに入り金を手にし、〈アーリアン・スティール〉の麻薬製造工場を襲撃する。

ポリーは、トレーニングの腕立て伏せ、首締め、ボクシングを毎日こなし、肉体的にも精神的にも驚くほどの早さで成長していく。そしてネイトとポリーの絆が深まっていく。迫り来る〈アーリアン・スティール〉の刺客と警察をかわして、父娘は生き残こっていけるか。

本書は、2017年、アメリカ探偵作家クラブ賞(MWN賞、エドガー賞)の処女(新人部門)長編賞を受賞している。また、2020年度版『このミステリーがすごい!』の海外編の2位にランクインした。ちなみに『週刊文春』では15位。
解説によると父親と娘の組み合わせは、『子連れ狼』からヒントを得たという。

『AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望』

喫緊に方向性を見出さなければならないAIへの対処について、4人のAI研究者へのインタヴューを掲載し、編者が解説をくわえている。AIに、意識を持たせることができるか?道徳観を持たせることができるか?さらに自律的になりうるか? そして、AIで人間は何者になるのか? について論じている。


AI以後: 変貌するテクノロジーの危機と希望 (NHK出版新書)

丸山 俊一 + NHK取材班
NHK出版新書 2019年10月 ✳︎7
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マックス・デグマーク(宇宙物理学者、MIT教授)
初期のAIわかりやすい論理だった。現在のAIシステム、ディープラーニングによるニューラルネットワークは、多少の間違いは許容範囲という設定がなされている。しかもブラックボックスである。初期のAIと現在のAIを統合して、少なくとも人間が理解可能なAIを作ることが、デグマークのビジョンだという。ブラックボックスでは、まずいということだ。

デグマークは「意識」をもつAIを開発することを目指している。意識は主観的体験と定義できる。意識とは道徳のことでもある。
ほとんどのAI研究者はもう数10年で汎用人工知能(AGI)を実現できると思っている。

ウェンデル・ウォラック(倫理学者、イエール大学研究員)
道徳倫理には二つの立場がある。一つは自分たちが属する社会が定めたルールを守ることが道徳的だとする立場。もう一つの理論は、ベンサムの功利主義。行為の良し悪しはルールを守るかどうかではなく、行為がもたらす結果や影響によって判断される。著者が主張する第三の理論は、正しくて良い行為は性格の良い人が実現するもの。

安全性と社会的利益を両立させるために、AI自身が道徳的判断を下せるようにすること、それを人工道徳的エージェントと呼ぶが、求められるようになると考えている。

ダニエル・デネット(哲学者、タフツ大学教授)
AIは心を持たない「知的ツール」であるべき。自律性を持つということはAIが人間を欺くことも覚悟しなければならない。AIを、制限された、視野の狭い、隔離された、孤立した知的ツールに留めておくべきである。質問に答えてくれる賢い機械であり、それ以上の野心を持たない存在に留めおくべきだ。
AIが意識のようなものを獲得する可能性はあるが、決して人間のようになれないと断言する。

ケヴィン・ケリー(著述家・編集者)
AIの存在によって曖昧だった人間の倫理が問われている。私たちは道徳や倫理を共有できていない。
「テクニウム」とは、テクノロジーが大規模で相互に結ばれたシステムを指す。生命を「自己再生可能な情報システム」としてみると、ヒトの次の進化形を「テクニウム」と名づけた。

丸山俊一
AIの理性を論じるとき、人間の倫理や道徳がいかに曖昧なものかを思い知らされる。地域や人間によって倫理や道徳に違いがある。
啓蒙主義的な考えやデカルトの2限論的な考えはAIを論じるときに通用しない。
汎用性AIをどう捉えるか、漸進性、つまり手探りで理解が深めていくということも重要であるとする。

AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望』丸山俊一(編著)+NHK取材班 NHK出版新書 2019年10月
銀河帝国は必要か? ロボットと人類の未来』稲葉振一郎 ちくまプリマー新書 2019年9月
AI倫理 人工知能は「責任」を取れるのか』西垣 通 河島茂生 中公新書クラレ 2019年9月
虚妄のAI神話 「シンギュラリティ」を葬り去る』ジャン=ガブリエル・ガナシア/伊藤直子・他 ハヤカワNF文庫 2019年7月

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