さいはての中国 安田峰俊
著者は中国国内外の中国らしいあるいは中国的な毒を含んだ場所で取材を行った。
アメリカに対抗する大国になりつつある中国は、王朝時代のDNAを引き継いだ国家主席が君臨している。外交では、アジア・アフリカの小国にインフラを整備する代わりに、金でがんじがらめにしている。著者の現地取材は右派雑誌『SAPIO』の企画で行われた。
さいはての中国 安田 峰俊(Yasuda Minetoshi) 小学館新書 2018年 |
中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深圳。ここにはネトゲ廃人たちがネットカフェで生活する。ネトゲ廃人たちは、土木・建築系の工事現場、スマホやタブレットPCを製造するデジタル工場がで働き、稼いだ金はネトゲやスマホのアプリ課金、オンラインカジノといったサイバーな娯楽につぎ込んでいる。
アフリカ系外国人たちが住む広州市。公的に確認されているだけで2万人、不法滞在者を含めると10万から30万人いるという。親アフリカ政策を取ってきた中国に、アフリカ諸国の人々は好意的な考えを持っている。
ショッピングモールの中国人ガードマンが言う。「連中は声が大きくて態度が傲慢だ。文化的な水準も低い。自国のルールだけで生きている。中国の文化を尊重しないんだ」。中国人が感じるアフリカの人々は、日本人が感じる中国人そのままだ。
習近平政権の特徴は、習近平やその一族と個人的な縁があったり、習近平に露骨にすり寄ってくる人間に厚遇を与えることだ。習近平は自分の仲間以外に対しては恐ろしく冷淡だ。習近平は王朝時代のDNAを引き継ごうとしている。
上海は江沢民がテコ入れした。深圳は鄧小平の肝入り。前任の為政者たちを上回る権威を身に付けたい習近平は、上海や深圳と同格の経済都市を自分の手で作りたいと考えている。新首都候補の雄安新区開発は「国家、千年の大計」とされている。
国家主席が変われば、政策が変わり、法律で投資が凍結される。それまで建設ラッシュの都市が、瞬く間にゴーストタウンになる。そんな内モンゴルの都市オルドスは、鬼城(ダイチェン)と呼ばれる。
カンボジアはポルポト時代に社会が破壊されてしまい、知識人の数が少ない。国税局員なのに帳簿をつけていない。政治家なのに政策立案の方法をしたない。だからこそ日本が発揮できる役割がある。
日本は無償資金協力であるが、中国は有償。カンボジア政府に援助の形をとりつつ、ツケ払いで巨額のハード・インフラを売りつけている。国民は中国を嫌っているが、政府が勝手に彼らを誘致する。中国からの有償資金は高官の懐に入る。
フンセン国王は野党カンボジア救国党の党首を反逆罪で逮捕し、救国党を解散させた。野党不在のままで総選挙が行われ、フンセンの党であるカンボジア人民党が全議席を獲得した。1993年にUNTACが作った議会制民主主義の枠組みがなくなってしまった。欧米諸国が手を引いた総選挙で、選挙を管理したのはまともな選挙が行われれいない中国である。
カナダの中華系住民は多い。人口3515万に177万人がいる。中華系活動家により、トロント州の高校の教科書に南京問題が掲載されるようになった。カナダから日本批判の狼煙を上げている。→人気ブログランキング
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