拳銃使いの娘
校門を出た11歳のポリーを待っていたのは、刑務所を出所したばかりの父親ネイト。
ポリーは現実を逃避している。ぬいぐるみの熊を抱え、自分は金星から来たとうそぶく。熊は片目がとれ汚れてみすぼらしくなっているが、ポリーの心のよりどころだ。ポリーはぬいぐるみの熊を生きているように扱う。
拳銃使いの娘 ジョーダン・ハーパー/鈴木恵 早川書房 2019年 |
ネイトの兄ニックは総合格闘技を身につけていた。ニックは酒場の喧嘩で相手を殴り殺して刑務所に入った。出所してから、〈アーリアン・スティール〉の用心棒におさまった。数年前、盗んだバイクで逃走中、警察に追跡されフリーウェイで激突死した。ネイトは敬愛するニックから男としての生き様を学んだ。
ネイトはニックのお陰で安全な監獄生活を送った。ところが、出所間近になって、〈アーリアン・スティール〉のボスであるクレージー・クレイグの弟を、物の弾みで殺してしまった。クレイブはネイトの暗殺指令を出した。命令はカリフォルニアの闇の社会に、瞬く間に広がった。指令書にはネイトと元妻と娘をナイフで殺し塩を巻くこと、と書かれていた
ネイトが出所したその日に、元妻と新しい夫はナイフで殺された。
ネイトは自分とポリーはどこへ行っても安全でないことを悟った。ならば、ポリーを守るためにこちらから攻めるしかないと決意した。ネイトの作戦は、殺害命令が撤回されるまで、〈アーリアン・スティール〉から麻薬や金を盗むというもの。
ふたりは銀行強盗をに入り金を手にし、〈アーリアン・スティール〉の麻薬製造工場を襲撃する。
ポリーは、トレーニングの腕立て伏せ、首締め、ボクシングを毎日こなし、肉体的にも精神的にも驚くほどの早さで成長していく。そしてネイトとポリーの絆が深まっていく。迫り来る〈アーリアン・スティール〉の刺客と警察をかわして、父娘は生き残こっていけるか。
本書は、2017年、アメリカ探偵作家クラブ賞(MWN賞、エドガー賞)の処女(新人部門)長編賞を受賞している。また、2020年度版『このミステリーがすごい!』の海外編の2位にランクインした。ちなみに『週刊文春』では15位。
解説によると父親と娘の組み合わせは、『子連れ狼』からヒントを得たという。→人気ブログランキング
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