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『塞の巫女 甲州忍び秘伝』 乾 緑郎

本書は、『忍び秘伝』(2010年)を改題し文庫化したもの。
甲州武田家三代、信虎、信玄、勝頼の波乱の生き様が太い縦軸となり物語の背景を流れる。武田三代の歴史は複雑である。

永禄4(1561)年、川中島の合戦で、甲府・越後の両軍の兵の多数が命を落とした。その戦いに姿を現した蕃神「御左口神(みしゃぐちしん)」とは、一体どのような神なのか。


塞の巫女 甲州忍び秘伝 (朝日文庫)

乾 緑郎
朝日文庫
2014年 ✳9
売り上げランキング: 609,769

主人公は歩き巫女の小梅である。
歩き巫女は祈祷や口寄せの他にも笑売(売春)も求められる。巫女が暮らし巫女を養成する禰津村は男子禁制で、歩き巫女見習いの小梅は、巫女の作法に加え忍びの術も会得するために厳しい毎日を送っていた。
歩き巫女は建前上は生涯未婚であるが、弓取という伴侶を持つことができる。多くの場合弓取は忍びの者である。小梅が初めて弓取と過ごす夜、思いがけないことが起こった。真田家家臣・武藤喜兵衛(真田昌幸)と一夜を過ごすことになったのだ。これを機に、二人の身分を越えた関係が育まれていく。

隻眼跛行の策士・山本勘助は父・信玄によって廃嫡されようとする武田義信に、「信玄を殺して経文を奪い、凶神を呼び寄せれば、その力は思いのままだ」と迫る。

小梅にはどこか人を惹きつける魅力があり、時に神懸かる。小梅は梅姫の生き写しとみられるくらい梅姫に似ている。 それもそのはず、忍びの者の加藤段蔵が梅姫の腹を割き赤子を引きずり出したが死んでるものと思い、甲府の辻に捨てたという。それが小梅だ。
梅姫は信玄に攻められ自害した諏訪頼重の娘で、信玄の側室という設定。

追放されていた信玄の父信虎が城に戻ってきて傍若無人に振る舞う。信虎の暗殺を兼ねて夜伽を命じられたのは新米の小梅であった。梅姫に似ていることで小梅に激昂した信虎は刀を抜いたが、胸をかきむしり命を落としたのだった。
信濃巫女衆には凄腕の女の忍びがいると噂になった。そして、戦の際には必勝祈願を、その戦勝の暁には小梅を城に出仕させるようにと、武田家の全幅の信頼を得る。

あまりの小梅の重用ぶりに何者かが小梅を拉致せよとの指令を出した、禰津村を忍びの者が包囲した。そして小梅は忍者・加藤段蔵に拉致される。小梅を奪還しようと武藤喜兵衛は蓼科山に向かった二人を追う。

なんとか喜兵衛は小梅を奪い返すが、二人は太古の諏訪に紛れ込み御左口神を目の当たりにする。喜兵衛はその姿から目を逸らした。長く凝視していれば、間違いなく見たものを狂気の淵に誘い込む。御左口神はそんな姿をしていた。小梅を連れ去った忍びの者は、蓼科山で一人残らず死んでしまった。
太古の神は、人間の野心などとは関わりのない存在だった。→人気ブログランキング

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