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『ねなしぐさ平賀源内の殺人』乾 緑郎

平賀源内は、酔って人を殺し自害しようと試みたが死に切れず、腹の創が致命傷となって獄中死したことになってる。

源内の身分は侍である。薬種を研究し医学に明るく、蘭学者であり、舶来のエレキテル、万歩計、寒暖計を見様見真似で完成させた。鉱山を探る山師の技術にも長けていて、戯作や浄瑠璃を書いて大ヒットさせた。いまで言えばマルチ・タレントだ。杉田玄白をして「非常の人」と言わしめた。抱えていればあれこれ利益を生む男だが、高松藩から奉公構(ほうこうかまえ)を受けている。藩から他家への士官を禁じられているのだ。これが源内の首を絞め続けた。


ねなしぐさ 平賀源内の殺人

乾 緑郎
宝島社 2020年 ✳8
売り上げランキング: 5,963

田沼意次に重用されるも、奉公構によって幕府に士官するわけにはいかない。といってその才能を手放すにはもったいないと、飼い殺し状態にあった。
本書の冒頭、意次の妾の家でのシーンで、意次と愛妾、嫡子の意知を前に、エレキテルの把手を回し電光を散らしている。源内は渡世のためにはなんでもしなければならなかった。愛妾が部屋の中で夢中になって飛ばす竹とんぼが、本作のマクガフィンになっている。

源内は阿蘭陀の本草学書『紅毛本草』の翻訳のため長崎に遊学したいと公儀に申し出たが、阿蘭陀翻訳御用のお墨付きはもらえたが、金は一文も出してくれなかった。
長崎平戸町にある吉雄耕牛の家に厄介になった。しかし、源内は翻訳を中途で諦め江戸に舞い戻る。
長崎遊学中、源内は下戸で萎陰(なえまら)なので、茶を飲んで話をするだけだったが、遊女の志乃と心を通わせる仲になる。

中津川の山を掘り砂金を掘り当てたものの金の鉱脈には到達できず、源内はいちじるしく信用を失墜させた。
秋田藩領内の阿仁銅山から産出される荒銅から銀を精錬し、あるいは坑道の水抜き普請を指導するために、吉田理兵衛とともに角館に来ている。屏風絵を描いた小田野武助という侍に、長崎で聞きかじった蘭画の遠近法と影について話すと、蘭画の真髄を掴むまで源内から離れるつもりはないという。阿仁銅山には1か月滞在した。

杉田玄白や前野良沢らが翻訳しようとしている『解体新書』の図譜を描くようにと玄白が源内に依頼するが、秋田からついてきた武助に委ねる。

源内は、何ひとつ落ち着いて成し遂げていないことを後悔している。家をしょっちゅう開けるし、引越しも頻繁にする。まるで浮き草のごとき生活である。
そんなある日、杉田玄白が源内の引っ越し先を訪ねると、戯作を学びたいと出入りしていた久五郎という米屋の小倅が殺されていた。
さらに、昨夜屋敷の普請の相談で源内の家にきていた丈右衛門が殺されていた。
源内は大番屋に連行され、数日後、獄中死したことを玄白は知らされる。
歴史はここまでだが、本作では源内は生きているという。→人気ブログランキング

ねなしぐさ平賀源内の殺人/宝島社/2020年
機功のイブ 帝都浪漫篇/新潮文庫/2020年
機巧のイヴ 新世界覚醒篇/新潮文庫/2018年
悪党町奴夢散際/幻冬社時代小説文庫/2018年
機巧のイブ/新潮文庫/2017年
塞の巫女 甲州忍び秘伝/朝日文庫/2014年

 

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