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ハーレクイン・ロマンス 尾崎俊介

ハーレクイン・ロマンスはカナダ産の恋愛小説叢書である。
現在、毎月2回それぞれ15冊程度、月に30冊、年間では400冊の翻訳本が日本の読者に向けて出版されている。
ハ-レクイン・ブックスは、1949年、カナダで生まれた。隣国アメリカで廉価なペーパーバックがブームとなり、リーチャード・ポニー・キャッスルは「ハーレクイン(道化師)」という名前をつけて、ペーパーバックを出版しはじめた。経営の才能があった妻のメアリーはロマンス関係の本しか売れていないことに気づき、ロマンス関連本だけを出版するようにした。秘書に図書館でロマンス小説を読ませ、気に入ったものがあればメアリーに推薦するよう指示。メアリーが読んで面白いとなれば再販権を獲得して出版するようにした。
Image_20201114105301ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ

尾崎俊介
平凡社 2019年 ✳9

それらのロマンス小説は、ほとんどがイギリスのミルズ&ブーン社のハードカバーだった。イギリスが舞台で、ときに英連邦王国の一部であるオーストラリアやニュージーランドが舞台となる。つまりカナダ人やアメリカ人とってはエキゾチックな要素を備えていた。

1960年代以前、アメリカのペーパーバック市場は男性がターゲットだった。1964年ハーレクイン・ロマンスという女性向けの叢書が入ってきて、1965年の時点ですでに600万部、毎年35%ずつ伸び続け、1977年位は1億部の大台に乗るところまで急成長を遂げた。1975年以降ハーレクイン社の出版物の7割がアメリカ向けだった。
ハーレクイン・ロマンスは本の厚さが一定である。製本の都合で32ページの倍数192ページに収まるように組版されている。

ハーレクイン社がアメリカで多大な成功を収めたのはマーケティング戦略による。売れるロマンスの公式を完成させた。それは、「ヒロインがヒーローに出会い、二人は障害を乗り越えて恋に落ち、そして結婚する」ということに尽きる。ハーレクイン・ロマンスは、すべてヒロインの視点から語られる。読者はヒロインに感情移入して読み進むのだからその視点は欠かせない。
読者は30歳代40歳代の既婚者であり、恋を成就させた経験者である。主人公は20歳そこそこの若い女性と相場は決まっている。ヒロインは絶世の美女ではなく、かわいい女の子。金髪碧眼小柄で華奢な体躯。お相手は185センチから195センチと長身で、もちろんハンサムでどちらかといえばラテン系の濃いめの顔である。会社を経営しているか、弁護士あるいは医者などであり、そもそも働かなくとも食べていけるくらいの資産家である。

ハーレクイン社は独自の配本ネットワークの構築に乗り出し、それまで配本を一手に引き受けていたサイモン&シュスター社との契約を打ち切った。サイモン&シュスター社は、ハーレクレイ・ロマンスのノウハウをそのまま使って、しかも、人気作家を引き、シルエット・ロマンスというシリーズを売り出したのだった。
そして、シルエット・ロマンス社は、それまでハーレクイン社がいわばタブーとしてきたアメリカ人作家を登用し、アメリカ人を主人公とし、ラブシーン描写を積極的に取り入れたのである。しかし、ハーレクイン対シークレットの対決はハーレクレイのシークレット買収で決着を見た。

新たな市場として、性モラルが厳しい国、中国、東南アジア、イスラム諸国、アフリカ諸国に、ハーレクインは販路を拡大しているという。→人気ブログランキング

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