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『殺人は女の仕事』小泉喜美子

翻訳家でもある著者は、女性探偵ものの名著『女に向かない職業』(P.D.ジェームス)や古典ミステリの名著『時の娘』(ジョセフィン・ティ)などの翻訳で知られている。
8編の短編集。はじめに大胆な設定が示される。「美わしの思い出」では、孫が祖母を殺す場面からはじまる。「殺人は女の仕事」では、はじめの場面で主人公が知人の妻に殺意を抱く。なんとも強烈な出だしだ。短いセンテンスで小気味よく進み、結末には余韻を残す一捻りが控えている。


殺人は女の仕事 (光文社文庫)

殺人は女の仕事
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小泉 喜美子(Koizumi Kimiko
光文社文庫 2019年 ✳︎8
売り上げランキング: 668,306

「万引き女のセレナーデ」
男は警察官からデパートの万引き対策の保安員に転職した。1週前に保安員が初犯と見て見逃した万引き女が、若い男と仲むつまじそうに女の下着売り場に現れ、再び万引きを働いた。ふたりは囮で、同じ階で大掛かりな窃盗が行われたのだ。女は警察に逮捕された。保安員と女はそれぞれが好ましく思っていたのだ。

「捜査線上のアリア」
少年は模造がんをポケットに突っ込み暗黒街の花形になる空想を抱いていた。パトカーのサイレンを聞いたときに、本物の犯罪を冒して夜の街に逃げ込みたいと思った。アパートの隣の女の部屋に、刑務所を出たばかりの男が人を殺めたと現れた。男は少年に死体の処理を手伝わせた。少年が遺体との間で殺し合いになったとことにしようと、男がナイフを少年に向けたとき、少年は模造がんを抜いて一目散に逃げた。パトカーに保護を求めた。パトカーの中で、なぜ模造がんを男に向けたのか警察に説明できないと思った。

「殺意を抱いて暗がりに」
理香子は世紀子を殺そうと片手に石を持って暗闇で待ち伏せしていた。世紀子の足音が近づいたと思い、理香子は石を振り上げて襲おうとすると、その人は逃げて行った。翌朝、朝刊には少年Bにより世紀子が刃物でめった刺しにされ死亡した記事が載っていた。少年Bは「相手は誰でもよかった」と供述した。週刊誌の記事に世紀子の殺人事件が載った。「石を持った女が怖い顔で睨んだので殺すのを止めた。その次に通りかかった女を殺した」と少年Bは答えていた。

「二度死んだ女」
月子は大病から何年か経ってカンバックした。今は三流のスナックに毛が生えたような店での出番を控えている。脱いだ服さえ置き場がないようなナイトクラブだ。
月子がステージに立っている間に盗難が発生した。月子は実際に盗まれた金額の10倍を盗まれたと老刑事に言った。そして犯人が捕まって、申告通りの額が手元に入った。老刑事は月子を初めて見たとき、美貌のジャズシンガーの母親だと確信したという。

「毛(ヘアー)」
年に数回、若い男から電話がかかってきて、寝ている良人と赤ん坊をおいて夜の街に出かける。翌朝デートを終えて帰ってくると、良人も赤ん坊も寝たままだった。自分の新しい枕カバーに1本の毛がついていた。布団をまくると新しかったシーツの上に縮れた毛が1本あった。

「茶の間のオペラ」
未亡人の小説家に、嫁いだ娘から電話がかかる。急を要するようだ。すぐに娘の嫁ぎ先のマンションに向かう。姑はべらべら喋り続け、もてなしの品々を並べる。娘は妊娠したという。それを知っておいとますることにする。エレベーターまで姑は見送りに出てきた。階段は下の方が暗く見えた。家に帰ると、嫁が見当たらない。暗い2階に向けて嫁を呼ぶ。

「美わしの思い出」
高2のあや子は小言を言われた祖母のやよいを殴って殺した。祖母は私を監視して小言を言い続けたと供述した。
あや子は学校を辞めてミュージカルのスターになるとやよいに言った。やよいはP劇団の公演会場の楽屋に乗り込む。そこで主役を務める女とかつて応援していた久方光に会う。警察に主役と光が説明にやってきた。やよいはあや子に自由にさせていたと言っていたと二人は説明した。少年院に入ったあや子は一切反省していないという。

「殺人は女の仕事」
滋賀子は編集社の編集担当。新人の小説志望の杉園伸一を紹介されたとき、心にときめくものを感じたと。そして伸一の妻こずえに会ったときに、殺したいと思った。
こずえに意地悪をしてやると志賀子は誓った。伸一にこずえの高校時代の友達から聞いた話を伝える。もちろん悪口だ。それを苦にこずえがマンションの屋上から飛び降りようとするという。→人気ブログランキング

女に向かない職業/P.D.ジェームス/小泉喜美子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫/1987年

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