死の舞踏 恐怖についての10章 スティーヴン・キング
キングは、本書はホラーというジャンルのあり方を概観するもので、自伝ではないとしながら、ラジオ、テレビ、映画、小説におけるホラーの代表作を、自分の体験を絡めて語っているので、多分に自伝の要素がある。饒舌さといつ戻るかわからない脱線にめげずに読み進まないと、本書を読み終えることはかなわない。
まず本書に通底する根本的な考えに「ホラーには寓意性がある」とする。怪物は怪物そのものではなく、現実にわれわれが恐れている何かのメタファーであるという。すぐれたホラーは寓意であり象徴なのだ。
![]() 死の舞踏 スティーヴン・キング/安野玲 ちくま文庫 2017年 ✳9 |
キングはホラーを解説するためのいくつかの分類を示す。
まずは恐怖には3段階あるとする。第1段階は嫌悪(リヴィルジョン)、「ウゲッ」となる生理的不快さ。一番低劣な怖さだ。
第2段階は恐怖(ホラー)、ゾッとする感じ。暗闇、墓場、幽霊屋敷、得体の知れないものがいそうな怖さだ。怖いもの見たさはこの段階で起こる。
第3段階は戦慄(テラー)、致死に限りなく近い、悲鳴が上がるような体験である。
ホラー小説の古典『吸血鬼ドラキュラ』『ジキル氏とハイド』『フランケンシュタイン』を例に挙げて、モンスターを分類する。
第1は吸血鬼、これはセックスの恐怖だという。第2は「人狼」、ジキルとハイドのように、普通の人が隠している狂気である。第3は名前のないもの。『フランケンシュタイン』の人造人間に代表される。ちなみに、「フランケンシュタイン」は人造人間(名前はない)の製作者の博士の名前である。その他に、幽霊がいる。
キングはホラーとは秩序の崩壊を恐れる気持ちだという。秩序がアポロン(理性と知性の力の象徴)的、秩序を破壊して起こる混沌をディオニソス(感情と肉体の無秩序な有働の象徴)的とする。テクノロジーの恐怖を表現する映画の大半にこの二面性がある。このギリシャの神のたとえは何回か語られる。ホラーの真髄を掴み取った概念なのだ。
ホラー映画の究極の真実、それはホラー映画は死を愛していないということ。そう見えるものもあるが、愛しているのは実は生だという。醜さや死を繰り返し語ることで生を賛美しているとする。いやはや凄まじい飛躍だ。さらに、ホラー文化が暴力の原因だと非難する風潮に対し、ホラー文化が惨劇を生むのではなく、ホラーは鏡に過ぎないという。
14世紀に中世ヨーロッパで黒死病(ペスト)が大流行した時、人びとは半狂乱で踊り続け、それを「死の舞踏」と呼んだ。タイトルはそこからきている。教会はメメント・モリ(死を忘れるな)と唱えた。死によって身分や貧富の差なく、無に統合されるという死生観である。死に近づくことで人びとは生を実感する。キングは、ホラー文化は「死のリハーサル」だという。
人びとがお金を払ってまでホラーを求める理由はそれだとする。→人気ブログランキング。
キングはホラー小説を書く理由を、短編小説集『深夜勤務』のはしがきに書いている。
それを要約する(→『深夜勤務』はしがき)。
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