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『首都感染』高嶋哲夫

新型コロナウイルス禍に世界中が見舞われている今を見通していたかのような内容である。その著者の先見の明にはただただ驚嘆するばかりだ。
世界がインフルエンザのパンデミック・クライシスに陥るなか、日本は東京を封鎖するという前代未聞の政策により、最悪の事態を免れようとした。その政策断行の先頭に立つ政治家や諮問委員会のメンバー、そして医師や最前線の医療機関で奮闘する人びとを描いた力作である。
なお本書は2010年12月書き下ろし作品として出版されたものの文庫化である。

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首都感染

高嶋哲夫
講談社文庫
2013年 ✳︎10

 

病原体は感染性と致死性が極めて高い新型インフルエンザ・ウイルスである。致死率は60%、サイトカイン・ストームを引き起こし、多臓器不全に陥り死に至る。感染症の専門家たちが、いずれH5N1型による高毒性の新型インフルエンザが猛威を振るうと予測していた矢先の出来事だった。

20✳︎✳︎年6月、北京でW杯サッカーが開かれており、世界のサッカーファンが北京に集まっている。中国チームは怒涛の勢いでイタリアとの決勝にまで進んでいる。
一方、中国雲南省で発生したインフルエンザにより、すでに10の村が全滅し、軍隊が出動し死体の処理を行っている。中国政府はW杯が終わるまで隠蔽しようとしたが、死者数の爆発的な増加により決勝戦を中止する決断に至った。

主人公の瀬戸崎優司は、WHOでインフルエンザの研究をしていたが、今は都内の黒木総合病院に勤務している内科医である。優司の父親は首相の瀬戸崎雄一郎、厚労大臣の高城は優司の元妻の父親である。優司の元妻・里美は現在もWHOに勤務している。さらに優司の同級生の黒木は医学部を卒業した後、基礎分野に進みインフルエンザ・ワクチンの研究をしている。優司の人脈は、インフルエンザを向かえ撃つ体制として万全である。
WHOに勤務していたとき優司はインフルエンザのパンデミックを想定した「都市封鎖」の論文を書いた。感染症対策のプロフェッショナルだ。

優司は新型インフルエンザ対策本部に招聘された。
中国政府が公表する前に、情報を掴んでいた日本は中国からの航空便の乗客を機内で検疫し、帰国後5日の間ホテルに缶詰とし、感染が疑われる人は入院させる方針をとった。
翌朝、新聞は政府が騒ぎすぎと書き立てる。また中国は日本の措置に遺憾の意を表明した。

北京から感染者が自国に帰っていく。案の定、各国でまたたく間に感染者と死者が爆発的に増加するなか、まだ日本では感染者が出ていない。
優司は空港閉鎖、新幹線などによる長距離の移動の禁止を進言した。
そうこうしているうちに、WHOは世界を震撼させる感染者数と死亡者数の発表を行った。
優司は東京封鎖という前代未聞の政策を提案する。→人気ブログランキング

新型コロナVS中国14億人/浦上早苗/小学館新書/2020年
コロナの時代の僕ら/パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介/早川書房/2020年
感染症の世界史/石井弘之/角川ソフィア文庫/2018年
H5N1 強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ/岡田晴恵/幻冬車文庫/2019年
隠されたパンデミック/岡田晴恵/幻冬舎文庫/2019年
ウイルスは生きている/中屋敷均/講談社現代新書/2016年
ナニワ・モンスター/海堂尊/新潮文庫/2014年
首都感染/高嶋哲夫/講談社文庫/2013年
復活の日/小松左京/角川文庫/1975年
ペスト/アルベール・カミュ/宮崎嶺雄/1969年

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